●優先順位をつけよう
すでにパンク寸前の時に、上司からさらに別の仕事を与えられるのは耐えがたいことだ。「上司は往々にして、個々のタスクにかかる時間を知らぬまま、仕事を割り振るものです」(デイビー)。その場合には、自分が抱えている仕事を説明し、「この中で最も重要なものはどれで、それ以外については優先順位をどうすればよいですか」と尋ねるべきである。
モーゲンスターンが勧めるのは、それぞれの仕事に「どのくらいの労力を割くべきか」「最大、最小、ほどほどの労力とはどの程度か」を上司に尋ねることだ。新しい仕事に関しては、完遂できるかわからない場合は、絶対にその場で引き受けてはならない。「たとえば、こんなふうに言って時間を稼ぐのです。『その仕事の要件を教えてください。いま進行中の他のプロジェクトをふまえて、できるかどうか検討します。明日お返事してもいいですか』」
●可能な範囲で協力しよう
仕事に忙殺されていても、可能な部分で協力するのが、親切かつ仕事人として賢明な振る舞いだろう。上司への言い方として、デイビーはこんな例を挙げる。「このプロジェクトを引き受けると、いまやっている他の業務に支障が出ると思います。でもスケジュールを調整すれば、これを担当する人に私が助言することはできます」。たとえばブレーンストーミングに参加する、原案に目を通す、相談役になる、などでもよい。そして、いつでも要望に応じられる準備をしておくようデイビーは勧める。
自分にできることがたとえ限られていても、ささやかな助けの手を差し伸べることは、「組織の成功にコミットしている責任感あふれる人、という周囲からの認知」を強めるのだとモーゲンスターンは言う。
●正直になろう
誰の人生にも、プライベートでの重大な出来事を他の何よりも優先すべき時がある。たとえば、母親が重い病気だと診断された、息子が学校で問題を抱えている、などだ。その場合、事態を正直に告げるべきだとモーゲンスターンは述べる。上司にこう伝えてもよい。「これを何とかしなければ、私の家族にとって深刻な負担になり、自分の仕事のパフォーマンスにも支障が出ます」。率直な言い方、そしてできるだけ自制心と冷静さをもって伝える必要がある。
デイビーもこの点に同意している。「状況を具体的に伝え、期限を定めましょう。たとえば、『こんなことは滅多にないのですが、向こう2週間はちょっと大変な状況になるので、手助けが必要です』というふうに」。分別のあるよき上司ならば、理解を示し、正直な態度を評価してくれるだろう。「英雄になろうと頑張っても、燃え尽きるまでやってしまうのは得策ではありません」
●同僚を味方につけよう
過重労働であることを上司に伝えても、必ずしも望ましい結果が得られるとは限らない。上司に改善する意図が見られなければ、自分が大変な思いをしていることを同僚に知らせるべきだとデイビーは言う。「上司が理解を示してくれなくても、同僚はわかってくれるかもしれません」。
彼らが負担の一部をなくしてくれたり、こちらの遅れに対処してくれたりするかもしれない。たとえ手助けが得られないとしても、自分が限界を超えていて全力を尽くせないのだと伝えることにはなり、信用の失墜を避けられる。
上司が部下の過労にいつまでも無関心な場合には、転職の必要性を検討すべきだとモーゲンスターンは指摘する。過重労働は長期的に持続可能ではないからだ。
覚えておくべき原則
【やるべきこと】
●個々の仕事に費やす時間をどう減らすかについて、マネジャーや同僚に助言を求める。
●優先順位の変更や、案件によってトレードオフが可能かどうか、率直に相談する。
●同僚やプロジェクトを微力ながら支援する方法がないか尋ね、協力の意思を示す。
【やってはいけないこと】
●自分に厳しすぎてはならない。場合により依頼を断ったり猶予を求めたりするのは、怠惰なことではない。
●新たな仕事をその場ですぐに引き受けてはならない。現在の仕事量を考慮したうえで追って返答すると上司に伝え、時間を稼ぐ。
●上司が耳を貸さない場合でも、同僚に事情を隠してはならない。限界を超えている時にはその旨を発信すれば、同僚からの信頼を損なわずに済む。