私たちは、メールの便利さについ頼りがちだが、その力を過信してはいないだろうか。筆者らの研究によると、対面で依頼をするほうがメールの34倍もの効果があることが示された。


 いま、あなたが力を入れている活動に寄付してもらう必要があるとしよう。できるだけ多くの人に寄付してもらうには、どうすればいいか。

 友人や家族、知り合い200人にメールを送るのも一案だろう。あるいは、ある1日に出会った何人かに、対面で寄付を依頼するのもいい。どちらの方法が、より多くの人からあなたの活動への賛同を得られるだろうか。

 メールはより広範に届けられるが、対面で依頼するアプローチのほうがはるかに効果がある。たとえば、200人に向けた大量メール送信と同等の結果を得るには、6人に直接会って依頼すれば事足りるのだ。にもかかわらず、多くの人はメールのほうがより効果があると考える傾向がある。

 ウェスタンオンタリオ大学助教授のマハディ・ログハニザッドと私は、共同で行った研究を学術誌『ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・ソーシャル・サイコロジー』に発表した。この研究で私たちは、メールによるコミュニケーションの説得力が過大評価される傾向がある一方で、対面コミュニケーションを用いた説得力は過少評価される傾向があることを明らかにした。

 ある研究に参加した45人は、見知らぬ450人(1人の参加者当たり10人)に声をかけ、簡単なアンケート調査に協力してほしいと頼むことになった。全参加者がまったく同じ筋書きに従い、まったく同じ依頼をした。ただし、参加者の半数はメールで依頼し、残り半数は対面で依頼した。

 その結果、アンケート調査に協力してもらえる確率はメールよりもじかに依頼した時のほうがはるかに高いことが判明した。この結果は先行研究と一致し、メールよりも対面のほうが依頼に応じてもらえる確率が高いことを明らかにしている。

 一方、参加者には、見知らぬ10人へのアンケート依頼に入る前に、何人が協力してくれると思うかを予想してもらった。対面で依頼する参加者たちは、平均すると10人のうち5人が同意すると予想した。またメールで依頼する参加者たちは、平均で10人のうち5.5人が同意すると予想した。この差異は統計的に有意ではない。依頼を受けてもらえるかどうかについて、メールで依頼した参加者は、対面で依頼した参加者と基本的に同程度の自信を抱いていたのである。実際には、対面による依頼はメールより34倍もの効果があるにもかかわらず、だ。