休暇の準備をできるだけスムーズかつ円滑にするのは、上司であるあなたの役目だ。

 長期的には、各役割のバックアップ体制を確立して、ナレッジ・マネジメントに基づきプロセスを体系化すれば、「自分の仕事は信頼できる同僚に任せてある」と、安心して休暇に出かけやすくなる。短期的には、テンプレートを配布して、現在進行中の活動やプロジェクトを文書化し、仕事の内容に応じて代理を務める人を指定する。この作業は休暇の2~3週間前から始め、休暇が始まる前にできるだけ多くのタスクのバックアップ体制が整うようにする。今年スムーズに短期休暇を取れれば、翌年はより多くの休暇を取る可能性が高まるはずだ。

 だが、休暇中に誤った行為を助長すれば、休暇を取るよう促した努力がすべて無に帰すだろう。

 あなたが言う「休暇」とは何を意味するかを、皆の前で明確にしておくといい。休暇中はメールや留守電をチェックして欲しくないと、休暇前にはっきりと伝えるのである。可能であれば、休暇中の社員の名前はメールの受信者リストから外す。代わりに、休暇中に起きた出来事で、休暇から戻った時に知っておいてもらいたいことのリストをつくっておく。上司として断固たる態度を取りたければ、部下がオフィスと連絡を取った場合は、その1日は休暇を取ったとは認めないことだ。

 休暇中にデジタル機器の電源を切ることは理に適っているが、休暇から戻った時のメールの山を恐れる人は少なくない。

 休暇の利用と質を高めるもう1つの秘訣は、休暇から戻った時の苦痛を少なくすることだ。理想を言えば、1日または半日をキャッチアップの時間としてスケジュールに組み入れるのがベストだ。その間は、休暇の時に職務を代行していた社員にそのままバックアップを続けさせる(不在時自動応答メッセージを利用する場合は、オフィスに戻る日付を翌日の営業日に設定し、1日の猶予期間を確保する)。

 柔軟に対応できる環境なら、部下が休暇から戻った初日は在宅勤務することを許可して、時差ぼけの克服や、洗濯物の山への対処をしやすいように援助してもいい。休暇の終わりに、わずかでも一息つける時間をつくり出せれば、休暇から戻った初日の正午までに休暇の効果を使い果たしてしまうことはなくなるだろう。

 十分に活用したい休暇のメリットの1つは、頭の働きを仕事以外のことに集中させる時間だ。この休憩時間を利用すれば、過去1年間に詰め込んだ全情報を整理して、まとめることが可能になる。また、ギアチェンジのように頭のスイッチを切り替えれば、洞察力と創造性も促進される。

 こうして高まった創造性を活かす手段として、部下が休暇から戻った2~3日後に、当人と通常よりも長いミーティングを設定する。休暇後の部下にじっくり耳を傾ける時間をあなたが設けることで、休暇を取るという選択を後押しすることになる。この時間はまた、通常ではできない会話をするチャンスでもある。プロセス改善や関係者に関わる厄介な問題、あるいはキャリア開発について話す絶好の機会だ。休暇後であれば、こうした難題にも取り組める気がしているはずだ。

 あなたがどれほど先見的な戦略を実施したところで、部下の一部は依然として休暇を未消化のままにしておくかもしれない。それを放置してはならない。「消化されなかった休暇」を部下へのフィードバックのテーマとし、キャリア開発についての話し合いでも話題に取り上げるべきだ。

 こう切り出してみよう。

「あなたには未消化の休暇が7日ある。確認したところ、休暇を消化しきれなかったのは、これで3年連続です。完全に仕事のスイッチを切る機会がなければ、あなたが能力を最大限に発揮できるかどうか心配です。いつ未消化分を使う予定ですか」。

 それでもうまくいかなければ、さらに強く出よう。

「この問題はいまや、あなたのパフォーマンスと昇進の可能性をどう考えるかにも影響を及ぼしています」 

 さて、こうした休暇取得の戦略を打ち出す前に、立ち止まって、あなた自身の休暇の取得具合をチェックしよう。あなたが仕事のスイッチを切って、真に充実した休暇を活用できていなければ、部下の誰からも同じことは期待できない。自分自身が休暇違反者の1人ならば、それを正直に伝えよう。なぜ休暇を取ってこなかったのか、その状況を変えるために何をするつもりかを率直に打ち明ければ、他のチームメンバーたちが有休消化目標を達成する助けになる。

 休暇は1人ひとりにとって、チームにとって、そして会社にとってよい影響を及ぼす。だが、現代の超多忙な職場では、休暇が反体制文化のように扱われている。あなたの会社と社員に実害を与える前に、このよくないトレンドを阻止できるかどうか。それは、あなた次第だ。


HBR.ORG原文 How to Get Your Team to Use Their Vacation Time, August 4, 2017.

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リアン・デイビー(Liane Davey)
チームマネジメントの向上を支援する3COzeの共同創設者。著書にYou First(未訳)、共著書にLeadership Solutions(未訳)がある。ツイッター(@LianeDavey)でも発信している。