同僚と友人関係にある社員は、より優れた業績を上げる傾向がある一方で、精神的に疲れやすく、友情を持続することが難しいという声もある。職場の人間関係において対立が生じることは避けられない。そういうとき、チームメンバーが友人関係になかった場合は良好な結果が生まれるが、友人関係があった場合は悪い結果につながるのだ。

 職場で友人関係を築くには、残念ながら、ある程度の副作用を覚悟しなければならない。仕事と友情の境界があいまいになると、厄介なもつれが生じうる。常に、社交ではなく職責が優先されるべきだし、マネジャーやリーダーが引き続き職務の割り当てを行えるようにしなくてはならない。役職の上下関係も尊重されねばならない。さらにパフォーマンスの評価も、信頼できるかたちで率直かつ誠実に行われるべきだ。

 多くの場合、職場には競争がつきものだ……昇進するのは自分か、友人か? それゆえ、信頼関係を築きにくく、親密な関係に踏み込むのをためらわせる。考えてみてほしい。あなたが友人の上司になったら、2人の友情はどうなるだろう?

 さらに、弱みを握られることへの恐怖もある。同僚に胸の内を明かすと、弱いと思われたり、能力不足と取られたり、最悪の場合、それにつけ込まれて不利な状況に追い込まれかねない。

 最後に、プロフェッショナルとして見なされ、プロらしく振る舞う必要があると、同僚に対して打ち解けて、親しげな態度を取ることを避けようとしがちだ。「プロらしい距離感」を保つことで、あなたに対する周囲の敬意を確かなものにできるからだ。

 こうした要因はすべて、職場での友人を作りづらくしている。少なくとも、友人をつくることに臆病になる。

 職場で友人を持つことにはさまざまな利点があるにもかかわらず、友人づくりを避けようとする人がいるのは、こういった理由によるのかもしれない。

 真の友人に囲まれて働くことが、ただ単に心地よくないと感じる人もいる。そういう人の場合は、同僚とフォーマルな関係を保つことで高いパフォーマンスを維持できるのかもしれない。

 それはそれで悪いことではない。職場で友人関係を持つ利点の多くは、不安や弱さを認める勇気信頼性共感といった価値観と結びついている。人間関係そのものではなく、こうした価値を重視することで、たとえ真の友情がなくとも、職場に「友好的な空気」を吹き込むことができる。

 さらに、シカゴ大学教授で『孤独の科学』の著者ジョン・カシオポが実施した調査によると、社会的なつながりを持つことで得られる健康や幸福感は、友人の数の多さより、そのつながりの深さに根差している(人は集団の中にいても孤独感を抱くものだ)。したがって大事なのは、自分の内に主観的な絆や友好の気持ちを養うことである。

 これまで述べてきた理由から、あるいは別の理由から、職場で友人をつくることに常に消極的な人はいるだろう。それでも、他人と社会的につながりたいという気持ちは、紛れもなく私たち人間の基本的欲求だ。

 友情は必ず、難しい問題に突き当たる。職場の友情もまた同様だ。問題の性質が違うだけなのである。


HBR.ORG原文:Having Work Friends Can Be Tricky, but It’s Worth It, August 08, 2017.