コンサルティングの使命も変化している
前述の米国系企業以外にも、サプライチェーン部署の能力進化に取り組む企業の事例にもいくつか触れておきたい。わかりやすい具体例として、サプライチェーン先進企業はネットワークシミュレーションを社内のケイパビリティにすでに取り込んでいる。その必要性は前述の通りである。米国Amazonやナイキはネットワークシミュレーションの内製化が完了しているといってよい段階にある。
両社のサプライチェーン部門を裏で支えるデジタルサプライチェーンソフトの最大手「ラマソフト」の日本法人代表の津村謙一氏に聞くと 、顧客体験進化とサプライチェーン進化を一体のものとして取り組む米国企業と、ともすると商品企画側と対極にサプライチェーン部署がいる日本企業の間に大きなギャップを感じるという。ネットワークシミュレーションをしながら常時新しいサプライチェーンのルートを企画するという仕事が、サプライチェーン部門の本丸の仕事の一つであるという。
物流ケイパビリティで抜きんでている国内某アパレル・ライフスタイル企業はマーチャンダイザー(MD)も物流を考えるし、そのためには物流部門でキャリアを積んだ人材がMD部門に還流するよう人事制度を組んでいる。またその際の人選も丁寧にやっている。すなわちサプライチェーン部門で経験を積み、オペレーションエクセレンスの一定レベルに達した人材をイノベーション企画側に送り込んでいる。
また、コンサルティング側も進化しないといけないと強く感じており、これまで機能戦略系コンサルティングのお家芸として囲ってきた分析・シミュレーションのような技術をもって、実用性はともかくワンタイムの分析結果を間違いなく提供する、というようなことではいけない。常に変化し続ける商品・サービス戦略についていける、企画力を持つサプライチェーン部門をお客様側に育てることが我々の使命と考えている。
アクセンチュア・ストラテジーのサプライチェーン&オペレーションズ部門は、サプライチェーン改革プロジェクトをご一緒する一定期間を経た後に、お客様企業のサプライチェーン企画能力が強くなっていることを主眼にしている。具体的には「デジタルサファリ」にお連れして自社では情報が入らないシーズ企業と引き合わせることもお手伝いする。
IoT機器・倉庫機器などもともにイノベーション技術を目利きしてインパクトを測りつつ導入の設計図を書き、データベースやITネットワークのようなインフラについての整備事項も同時に洗い出す。サプライネットワークのコストシミュレーションモデルを構築したら、その分析モデルを随時自社で回せるようにケイパビリティを移管する。一連の体験を通じて、サプライチェーン部門を中心に経営の求めに応じた変化が高速回転することにコミットしたいと考えている。

関連サイト: https://www.accenture.com/jp-ja/open-innovation-initiative-index