AI(人工知能)時代に不可欠な
課題を見つけ出す人
特集では「課題設定の力」を多面的に紹介していますが、特に今必要な力の特徴は、上記2人の日本人、野々村氏と横山氏が共通して主張する点に際立っています。それは、課題設定する人の「主観」(野々村氏)や「意志」(横山氏)です。
野々村氏の論文では、「企業や、そこで働く個人が『つくり手』として、ある種主観的にユーザーのために創り出したいものは何なのかと問いかける。このつくり手の主観と想いは過小評価されることが多いが、今回の『問いかけ』というテーマと最も密接に関わるところである」とあります。
横山氏の論文では、「何よりも大切なことがある。それは中核課題の設定、良循環の創造、良循環を駆動する仕組みの実装というすべての段階において、強い意志を持つことである。誰よりも先に課題設定をしようという意志なくして、深く状況に切り込んだ悪循環も見つからないし、本質的な課題の定義はできない」と主張しています。
この2人の論考を読むと、入山章栄氏の連載「世界標準の経営理論」第25回のセンスメイキング理論(2016年10月号掲載)を思い出される方がいるかもしれません。
その論考には、「センスメイキングは、認識論的相対主義に近い立場を取る」として、その相対主義は、「主体(組織)は客体と分離できないから、組織は行動して環境に働きかけることで、環境への認識を変えることができる」とあり、「優れた経営者・リーダーは、組織・周囲のステークホルダーのセンスメイキングを高めれば、周囲を巻き込んで、客観的に見れば起きえないような事態を、社会現象として起こせる」と書いています。
そして、この考え方は、「いま多くの経営学者が支持する、世界標準の経営理論なのである」と論考を結んでいます。
前号1月号のマサチェーセッツ工科大学教授のエリック・ブリニョルフソン氏らの論文「人工知能が汎用技術になる日」では、パブロ・ピカソの言葉「(コンピュータは問いに)答えることしかできない」を引用して、AI(人工知能)時代になっても、「課題を見つけ出すこと人が今後も不可欠である」と論じています。「課題設定の力」の習得は、息の長いテーマと言えます。
また、1月17日に、書籍『世界一やさしい右脳型問題解決の授業』(渡辺健介著、ダイヤモンド社)が発売になります。47万部の大ベストセラー『世界一やさしい問題解決の授業』の第2弾です。新著のキャッチフレーズは、「画期的発明やイノベーションは、右脳の働きがカギとなる。成果・アウトプットに欠かせない“右脳型”問題解決力は、一部の天才だけのものではなく、誰にでも再現可能なスキルである」というものです。
こうした能力が今、そして今後、求められているのです。(編集長・大坪亮)