妻の高ステータスは夫婦生活にマイナスか?(夫が洗濯をすれば大丈夫)

●問い
アカデミー賞の主演女優賞を受賞した女性は、主演男優賞を獲った男性に比べ、離婚を申請する割合が高いという。この現象は「オスカーの呪い」として知られる。女性の高ステータス職は、結婚生活の安定に影響を及ぼすのだろうか。
●検証方法
高ステータスの役職に就いている計209人の女性に、夫のステータスとの比較に関する9項目の評価尺度に回答してもらった。回答者の夫、53人からも同様のデータを収集した。
●結果
夫より自分のほうが高ステータスの職にあると感じている女性は、怒りや恥の感覚を持っている割合が高い。そのことが結婚生活の満足度にマイナスの影響を与えている(なお男性は、妻がステータスについてどう感じていても影響を受けていない。夫が結婚生活に不満を覚えるのは、妻が2人の関係にはっきり不満を示した場合のみであった)。
ただし、男性が妻に(精神面だけでなく)実質的なサポート(育児や親の介護、家事など)を提供している場合は、女性の回答には怒りの感情が見られなかった。
●結論
女性にとって、キャリアと家庭の両方を成功させることは依然として難しい。率直に夫と話し合うことはその一助となる。しかし、もっと重要なこととして、夫および会社からの実質的なサポートが、仕事と家庭の成功を後押しするだろう。
アリソン・バーン(ニューファンドランド・メモリアル大学助教)、ジュリアン・バーリング(クイーンズ大学スミス・スクール・オブ・ビジネス教授)
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女性は幹部職に応募し不採用になると、
再度の挑戦をためらいがち

●問い
女性はキャリア開始時には、男性と同等の野心を持っている。だが経営トップへの競争となると、途中で降りてしまうのはなぜだろうか。
●検証方法
英国で経営トップを目指す上級幹部1万人超を対象に調査。さらに、女性リーダーへのインタビュー、アンケート、無作為化実験を実施。
●結果
女性は男性に比べ、幹部職に応募する割合が低い。ただし、この傾向が見られるのは、「過去に同等の幹部職に応募し、不採用になった経験がある」場合のみである。その理由は、自信をなくしたからではない。自分は企業社会の最上部では真価を認めてもらえない、と感じるからだ。女性はまた、募集と採用のプロセスについても公平ではないと感じている。
●結論
「幹部職に応募して不採用になった女性が、以降に出世競争から降りる。この決断に至る一因として、幹部人材の労働市場で彼女らが被ってきた、ネガティブな偏見で見られるマイノリティとしての経験がある(編注:本記事によれば、世界の経営幹部に占める女性の割合は24%。S&P500企業のCEOで女性は約5%)。
考えてみてほしい。幹部職に応募する女性幹部人材は、過去にマイノリティとしての経験を持ち、自分が部外者、あるいはリーダーシップ能力が正当に評価されていない、と感じさせられる状況にあったかもしれないわけだ。
男性のほとんどは概して、そのような状況に置かれたことはない。したがって不採用になっても、“幹部としてふさわしくない”というメッセージだと解釈することが女性よりも少ない。このため、失望しても再挑戦の意図をくじかれにくいのである」
レイナ・ブランズ(ロンドン・ビジネススクール助教)、イザベル・フェルナンデス・マテオ(ロンドン・ビジネススクール教授)。
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女性は男性よりも、
競技中のプレッシャーにうまく対処する

●問い
男性と女性のどちらのほうが、大事な局面で緊張による失敗をしやすいのだろうか。
●検証方法
2010年に行われたテニス4大大会(グランドスラム)の、8200超の試合を分析。具体的には、第1セットでのサーバーのパフォーマンス(サーブの成功率)に注目した。
●結果
男子のパフォーマンスは、勝敗の分かれ目(セット中のスコアが4-4のときなど)になると精度が下がっていた。一方で女子のパフォーマンスは、同点の前後でほぼ同じであった。精度が下がった女子もいるが、その悪化率は男子よりも平均で50%低かった。
●結論
「我々は確信を持ってこう言えます。プロテニスの世界では、女性はプレッシャー下で男性よりも優れています。緊張による失敗がより少ないのです。これが他の競争の場面でも同じかどうかは、まだ定かではありません」
アレックス・クルーマー(ザンクトガレン大学研究員)
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HBR.org原文:What Research Tells Us About How Women Are Treated at Work, December 27, 2017.
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グレッチェン・ガベット(Gretchen Gavett)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のアソシエート・エディター。