※本稿は「顧客の『選択』を『習慣』に変える」の内容を基に構成されています。

人は習慣の産物なので、新奇性に気がつかない

 我々の脳には、ヒューリスティック、つまり経験で得られた知識や法則に基づいて、何かを「これである」と決め付けたがる性質があり、その場合、目に入っている情景の持つ予想外の側面や目新しい側面を無視することが多い。脳は「いまと関係のある未来を予測することに忙殺されている」と神経科学者のモシェ・バーは断言している。「我々が何かを見ると、脳は『これは何か』と問うのだが、実際には『これは(自分の知っている)何と近いだろうか』と考えているのだ」。つまり我々は、世界から取り入れた情報から、自分が以前に遭遇した事実に近いものを探し出そうとしているのである。

 この急速な予測プロセスは、イントロを聴いて曲名を当てる、かつての人気テレビ番組「Name That Tune」での、頭の働きと似ている。曲を何度も聴けば聴くほど、短いフレーズを聴くだけで曲名を言い当てられるようになる。必要なエネルギーは少ないほうがよいに決まっている。マーケティング担当者の目標は、消費者に一瞬で自社ブランドを買う気にさせることだ。メロディや歌詞を頻繁に変えてもあまり効き目はない。