「情報」が成長の源泉になれば
パフォーマンスは毎年倍増する
――指数関数的に急成長する組織の原動力は何でしょうか?
2つ挙げられます。1つは「ビジネス領域の情報化」が成長の原動力です。ムーアの法則は半導体の性能だけでなく、情報にも当てはめられます。どんな分野、技術、業界でもひとたび情報化され、「情報」が成長の源泉になれば、パフォーマンスは毎年倍増していきます。前述したエアビーアンドビーも情報基盤がすべてと言っていいでしょう。
また、テスラのモデルSはクルマのかたちをした高性能な「コンピュータ」のようなもの。例えば、従来のクルマは新車であっても、設計されたのは7~8年前、技術は10年前のものかもしれない。しかし、テスラはソフトウェアのダウンロードで毎週アップグレードできますから、常に最新技術が搭載された新車に乗っているようなものです。
2016年にトロントからマイアミまで愛車のテスラを運転したときは、道中の35%がオートパイロット(自動運転)でした。翌年も同じ道を運転したのですが、そのときはソフトウェアの改善によって85%まで自動運転が可能になっていました。同じクルマ、同じセンサーでしたが、ソフトウェアのアップグレードによって性能が向上していたのですね。
もう1つはテクノロジーの飛躍的な進化です。AI(人工知能)、ロボット技術、バイオテクノロジー、データサイエンス、3Dプリンティングなどがかつてのコンピュータと同様に急速に進歩しています。
ここで興味深いのは、世界の時価総額トップ5の企業は、すべてテクノロジー、情報系であることです。もうすでにパラダイムの変化は起きているといえるでしょう。
――本書は4、5年前の調査を基に執筆されていますが、今書くとしたら何か加えることはありますか。
そうですね。優秀なデザイナーやクリエイティブな経営者の思考法をまねて新しい発想を生み出す「デザイン思考」と、プラットフォームを顧客に提供する「ビジネス・アズ・ア・ プラットフォーム」の2つを、飛躍型企業の特徴として加えたいですね。P&GやGE、ユニリーバなど、フォーチュン500社のほとんどの企業が何らかのかたちでこうした考え方を採用しています。
デザイン思考というと、「えっ、今ごろ」と意外に思うかもしれませんが、この10年間に最も成功しているのはデザイン思考型の企業です。アップルのiPhoneや、旅行比較サイトの世界大手、カヤックのサイトなどがいい例です。優れたユーザビリティは明らかに1つのパラダイムを作っています。
デザイン思考を通じたユーザーエクスペリエンスの向上によって、指数関数的な成長がどの時点で現れるかについて注目しています。使い勝手が良くなってきて、ある時点を超えると爆発的に成長します。
プラットフォームという点では、iTunesとSpotifyの例が挙げられます。それまでレコードやカセット、CDといったハードウェアで流通していた音楽を、この2社がネット上でデータとして流通させるプラットフォームを構築し、ビジネスを大きく変えました。その結果、8つの主要なレコード会社は淘汰されました。
同じように主要10社 以上ある自動車会社も、プラットフォーム化によるビジネスモデルの変革によって2~3社に集約される可能性があるとみています。