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業界トップ企業を消滅させる
最も多くの原因
1990年代終盤、英国のレコード販売会社HMVは我が世の春を謳歌していた。目抜き通りに設けた音楽CD販売店では、来店者が膨大な種類のCDを見て回り、店内のヘッドセットで試聴したうえで購入判断を下すことができた。HMVはこのビジネスモデルを武器に、英国国内で40%もの市場シェアを獲得し、羨望の的だった。
快進撃の始まりは、1960年代のポピュラー音楽革命を機に、ロンドン市内で小売事業の拡大に乗り出したことだった。1970年代に規模を倍増させ、1980年代初めには音楽専門の小売店として国内の覇権を確立していた。1986年にアイルランドとカナダに店舗を開設し、ほどなく、米国、フランス、ドイツ、日本に進出した。1990年代には店舗数が320超に達し、うち約100店舗が本国にあった。2002年にはロンドン証券取引所に株式を上場し、時価総額は約10億ポンドを記録した。
しかし、その頃すでに一部の従業員やアナリストからは、HMVのビジネスモデルが長く存続できるかどうか、疑問視する声が上がっていた。DVDやコンピュータゲームが登場すると、最初こそ店舗の利益は増えたが、スーパーマーケットチェーンが大衆向けCDの安売りを始めていたほか、1998年初めにはアマゾン・ドットコムがCDのネット通販に参入した。数年後にネット上での楽曲ダウンロードが可能になると、これを序曲として、2003年にはアップルがiTunesストアを開設する。