マーケティングと営業は似て非なるものである。とりわけ産業財の世界では、これら二つの職能を混同し、顧客の言いなりになることが顧客ニーズに応えることであり、顧客のご機嫌取りが顧客リレーションシップのカギであると誤解している、マーケティング不在の企業が少なくない。セメント業界最大手のラファージュ・グループもその一つだった。コモディティ化に苦しむ同グループのセメント部門は、二〇〇二年、マーケティング志向の組織へと生まれ変わるために、CMO職を新設し、ここにマッキンゼーの元コンサルタントを起用して、五カ年計画のプロジェクトを始動させた。本稿は、このプロジェクト・チームが、いかにマーケティングの文化を定着させていったかの物語である。