-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
ハイ・プレッシャー営業と
ロー・プレッシャー営業
強引、しつこい、狡猾といった「ハイ・プレッシャー営業」はもはや過去の遺物と非難する人たちは多い。一方、「ロー・プレッシャー営業」とでも呼ぶべきスタイルが多数派を占めつつある。ハイ・プレッシャーからロー・プレッシャーへ──。この傾向はいまに始まったものではない。
そもそも、ロー・プレッシャー営業とはいかなるものか。どのようなかたちにせよ、いわゆる押し売りではないということか、それとも単にうまくごまかしているだけなのか。なぜ効果的なのか。これまでの営業スタイルとは異なるため、買い手の意表を突くのか(ということは、いずれは驚かれなくなり、その効果も薄れていく)。あるいは、相手が自然に反応するからか。
「ロー・プレッシャー営業は手堅く、生産的である」と言うが、はたして需要を喚起するものなのか。実のところ、買い手市場にあっては、およそ成功しない、効果の乏しい手法なのか。
本稿では、このような疑問への答えを見出し、営業マネジメントにおける意義について考えてみたい。その際、対面営業、具体的には店頭販売ではなく訪問営業に絞ることとする。
ただし忘れてならないのは、明らかに他の営業活動と類似しているという点で、当然のことながら、ロー・プレッシャー営業も広告宣伝や販促計画と戦略的に関連づける必要がある。
さらに私は、本稿で申し上げることが実践に移されることを望んでいるというよりも、ロー・プレッシャー営業と、主にB2B取引、すなわち再販業者や一般企業の購買担当者への営業との関係について確認したいと考えている。これらの人たちは、感情よりも経済合理性を優先して購買するかどうかを判断しており、それゆえロー・プレッシャー営業が適していると思われるからだ。
とはいえ、一般消費者を除外する必要はない。彼ら彼女らもまた、いまや合理的な購買者である。かつてはハイ・プレッシャー営業の典型とされていた一般家庭への訪問販売でさえ、わずかに開いたドアにつま先を突っ込むといったやり方は時代遅れであると認識されている。むしろ、ドアが開いたら、一歩後ろに下がって、にこやかに微笑みかけ、商品サンプルを手渡して、「明日、またおうかがいいたします」と言うことだろう。
実際、社会全体で、けっして衝動的ではなく、慎重に吟味し、本当に必要なものを購入するという合理的な購買に向かいつつある。この傾向とロー・プレッシャー営業には、何らかの関係があることは間違いない。