ある営業マネジャーのため息

 ボブ・ブロディは営業部長である。彼は眉間にしわを寄せて、椅子のなかで背中を伸ばした。今年は売上げを8%伸ばせとの上からのお達しである。実際に汗を流すのはだれだと思っているのだろう。

 昔の営業はよかった。「目標プラス10%」と一言号令をかければ、全エリアの全営業担当者が同じ目標を目指して、何とかしてくれたものだ。もちろん目標に達しない者もいたが、その分はトップ営業マンたちが十分埋めてくれた。

 それがいまでは、ほとんどの企業の購買部門がコンピュータ・ソフトを使って日用品の仕入先を決めている。冷徹な金勘定のほうが人間関係よりも大事になったのだ。また、自社仕様にカスタマイズされたソリューションを求める、ややこしい取引も増えた。

 どんなにゴルフのお供をしてみたところで、もう契約は取れないのだ。製品と業界を熟知した精鋭を集め、インセンティブもたっぷり与えて、バック・オフィス支援もしっかりやる、これ以外に術はなさそうだ。

 実を言うと、ブロディは途方に暮れていた。「いつかこうなるとはわかっていたが――。いまの営業は、昔のように単純なものでも、予想しやすいものでもなくなってしまった。プラス8%だって。どこから手をつけていいのやら――」

 どこかで聞いたような話に思えるとしたら、これはどこでも似たような事情だからであろう。我々はこの数年、ブロディのような立場の営業部門のリーダーたち数十人に、彼ら彼女らが抱える営業課題を解決してきた。

 世界はどんどん変わっているにもかかわらず、この人たちは上から降ってきた目標を下に押しつけ、一つ覚えのように営業担当者の頭数を増やし、そのうちのだれかが何とかしてくれると願っているだけなのだ。

 お手本とされるゼネラル・エレクトリック(GE)においても、営業面ではこのような場当たり主義の時代があった。営業担当者に担当地域を割り当て、「目標目指してがんばれ」と送り出すだけだった。マイケル・パイロット――彼は22年前、営業職としてGEに入社し、いまではGEコマーシャル・ファイナンスの一部門、USエクイップメント・ファイナンシングの社長を務めている――がそう言っている。