企業が戦略計画を策定する際、多くの場合、「戦略」と「目標」と「アクション」を混同していると筆者は言う。それを防ぎ、戦略を立案するには何が必要なのか。本記事は、主要ステークホルダーごとに戦略要素をポジショニングするという方法を示す。
マネジャーの一団が2日間リゾートに会して、「戦略計画」を打ち出すのはよくあることだ。無事終了して、みな家路につく。だが、戦略をともなった計画は、本当に策定されたのだろうか。
私は、戦略計画の策定に関する公開セミナーを主催している。その冒頭で、企業の取締役やCEOから中間管理職にいたる幅広い階級の出席者に対し、戦略の一例を紙に書いてみるよう求める。みな最初は、いぶかしげにこちらを見るが、じきにそれが難しい課題だと気づく。そう、これは実際に難しい問いなのです、と私は認めて安心させ、彼らは作業を進める。
その結果は常に、私にとっても出席者にとっても、驚くべきものだ。以下に、私が最新のセッションで受け取った回答のいくつかを紹介しよう。
・アクション:「新たなサービスを立ち上げる」「退職者が引退後に始める事業に、当社が適しているかを見直す」
・活動:「適切なチャネルを通じて製品のマーケティングをする」
・目標:「1億ドルの純収益を達成する」
・実行すべきことの概要:「製品のプロセスを最初から最後までプランニングする」「ステークホルダーのために動く」
申し訳ないが、これらの回答の1つとして、戦略とはいえない。
残念ながら、経営幹部は「戦略」について語るとき、その意味をよくわかっていないことが多い。それはなぜか。問題は、その言葉自体から始まっている。経営陣や取締役会の間で恐ろしいほど誤解されているのだ。
最も一般的なのは、「目標」「戦略」「アクション」の混同である(公表されている戦略計画でも、この混同は頻繁に見られる)。この点さえ把握すれば、今日は有意義な1日になるはずだと私は聴講者に言う。
「目標」とは、達成を目指している事項であり、「組織的成功」の指標である。その対極にあるのが「アクション」だ。これは個々人のレベルでなされ、マネジャーが日々接するものである。
このためマネジャーは、「戦略」というと当然のように、「何を実行するか」に焦点を当ててしまう。だが、これも戦略ではない。
「戦略」とは、目標とアクションの間にあるもので、組織レベルで生じるものであり、マネジャーはそれを同じように「感じる」ことはできない。戦略とは総体的な概念なのだ。その点ではCEOが優位な立場にある。なぜなら、会社全体を見ることができるのはCEOだけだからだ。