大崎 邦彦
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
シニア・マネジャー

首都大学東京大学院理工学研究科 修了。2009年アクセンチュア入社。官公庁、製造業、金融機関、メディア企業など幅広い業界において、事業戦略、組織・ガバナンス改革、営業改革、人材戦略等のコンサルティングに従事。組織・人材プラクティスのコアメンバーとしてHR Tech、HR Analytics等のソリューション開発にも関わっている。

――AIとの協働がまだ具体的にイメージできていないのでは。

大崎 個人の自助努力に任せすぎるという側面があると捉えています。例えば、製薬会社には発売する薬のリスクをチェックする業務があるのですが、AIはこの部分を判断する、人間はこの部分にもっと注力するというように業務の定義を見直しました。これに連動して、必要とされるスキルやトレーニングプランの見直しも進めているそうです。こうした具体的な提示があれば、自分の仕事が今後どうなるのか、何を勉強しなければいけないのかがクリアになりますよね。こうしたサポートを経営側が進めていく必要があるのではないでしょうか。

宇佐美 AIを自分事として受け止められるかどうかというマインドセットが、海外との違いを生んでいるように思います。図1の海外と日本との大きな格差の主要因の一つは、実質終身雇用を背景とした会社と個人の関係性(社員は会社頼みでAIが台頭しても雇用は守ってくれるだろうというような受身の構造)があると考えています。これを打破すべく最近アクセンチュアでは「リード・ザ・セルフ(自らをリードする)」ということを提唱し、多くのクライアントのトランスフォーメーションプロジェクトの中に組み込んで頂いています。自分が何をやりたいかという志を明確にし、その志が会社の達成しようとしているPURPOSE(使命・存在意義)と同期化する(=自分事化する)と、何事も自律的に取り組めるようになります。AIとの協働についても、AIで何ができるかを自分で考え、行動を起こしていくくらいのポジティブさがほしい。もちろん、会社による体制整備も必要ですが、根底に社員一人一人の「リード・ザ・セルフ」のマインドセットがなければ、パフォーマンスは上がっていかないでしょう。

――企業の課題となっている人材不足解消に向けて、産学を結ぶ人材育成コンソーシアムも設立したそうですね。

保科 はい。大学や研究機関にはデータサイエンティストやAI技術者になる素養を持つ人がたくさんいますが、実ビジネスの課題や実データがなく、経験不足がネックになっています。一方、企業では解決すべき課題、リアルなデータはあるものの、人材が不足しています。そこでアクセンチュアは、両者をマッチングさせるために、企業と大学等が連携した実践的なAI教育をサポートする一般社団法人「サーキュラーエコノミー推進機構」に立ち上げ時から参画し、実践的なデータサイエンティストやAI技術者の育成に取り組んでいます。