――AIとの協働を進める際に注意すべき点は何ですか。
保科 まず、自社の強みは何か、それをAIとの協働でどう伸ばしていくかを考えることが大切です。日本企業の場合、「あの会社が導入したので我が社も同じものを入れたい」という話が多いのですが、それが必ずしも正しいとは限りません。
自社のコアとなる領域を見極め、その領域を伸ばすためにこそ、最先端のAIを開発・活用すべきです。逆に強みではない領域は、AI技術を導入するにしても、比較的コモディティ化した技術を導入すればいいでしょう。
AIに何を解かせるべきかを
考えさせる教育も必要
――では、人間とAIの協働のためにはどのような教育が求められるでしょうか。
保科 統計や数学、プログラミングなど、AIを開発・活用するための知識・スキルといった表層的な教育だけではなく、解決すべき社会課題は何か、AIに解かせるべき課題は何か、人間が解くべき課題は何かを考える根幹的な教育も不可欠です。
こうした教育の重要性を踏まえ、アクセンチュアでは、社会貢献活動の一環として、小学生を対象に課題解決型ロボットプログラミング講座「Robo*C」を開催しています。単にプログラミングの方法を学ぶだけでなく、世の中の社会課題を考え、それを解決するロボットを制作してもらっています。小学生には難しすぎると思われるかもしれませんが、今の子どもたちはすごい。先日の講座でも、家を守るセキュリティロボットや、目の見えない人に何かが近づいてきたことを知らせるロボットなど、わずか数時間で様々なアイデアを出し、センサーやアクチュエーターを駆使して、簡単なものではありますが動くロボットを実際に作ってしまいました。
大人も同じで、身近な社会課題や自分が携わる業務の課題、顧客が抱える課題などを見つけ出し、それを新しい技術を使って解決していくことが重要です。小学生でもあそこまでできるんですから、大人ならよりスケール大きく課題解決にチャレンジしてもらいたい。それなのに、現状、AIとの協働に向けた具体的なアクションが少ないことに強い危機感を覚えますね。