2025年まで起こる
重大な変化を世界39都市で議論

 そもそも本書は、グローバルなオープン型未来予測プログラム「フューチャー・アジェンダ」から生まれた。

 このプログラムは、2010年に第1回が行われ、著者の1人であるティム・ジョーンズ博士を中心として、「2020年までに起こる変化」について議論が行われた。2015年には第2回が開かれ、「2025年までに予想される重大な変化」を議論した。

 もちろん、こうしたプログラムは日本にないわけではない。だが、この規模感はあまり例がない。

 まず、第1回を行った際は、1500を超える組織がワークショップに参加し、25カ国に及ぶ起業のCEOや市長、学識経験者などが加わった。さらに145カ国以上の5万人を超える人々が意見を投稿したという。

 ブラッシュアップする形で行われた第2回においても、世界39都市で50の組織が9カ月にわたり、120のワークショップを開いたのだ。

 まさに、現代の集合知といっても過言ではないだろう。実際、著者も本書を発刊する2018年時点で「2010年に行った予測の約90%が実現した」と自負しているのである。

 残念ながら、世界から見れば日本の環境は異質なため、日本人にとっては見慣れない言葉や考え方がある。

 だが、世界を見渡した際に、時代の流れがどちらにむいているのかがわかるはずだ。例えば、企業に関する考察には示唆があるだろう。

創造性を発揮し若者を生かす
未来の組織の条件とは何か

「組織3.0」と題し、本書は未来の組織についてこう予測する。

「水平型、プロジェクト型、協働型、あるいは仮想チームなど形式にとらわれない、新たなかたちの組織が一般的になる。それを可能にするのが技術とノマド型労働者だ。今後は仕事の性質や組織の役割が曖昧になっていく」

 その前提となるのが、知的資本を基盤とする知識型経済へ移行しているという点である。少ない従業員で、アイデアとテクノロジーの力を生かして世界規模のサービスを開発するという時代に入っているのだ。

 ウーバーやスナップチャットなどの事例を引きながら「将来は企業価値の高い企業のほとんどを、創業10年未満のスタートアップが占めるかもしれない」とも言及する。

 つまり、企業としては、知的労働者の創造性を発揮しやすい環境を用意することが肝心だ。一例を挙げれば、アジャイル(俊敏)で自律型の組織を目指すことである。

 とはいえ、この程度なら勘のよい管理職の方はお分かりかもしれない。ただ、案外、忘れやすいのが世代の意識差である。

 本書は「職場のルールを揺さぶっているのがミレニアル世代だ」と指摘する。ミレニアル世代とは、1980年代前半~2000年代初頭に生まれた20~30代の若者を指すことが多い。

「上の世代の働く意欲をかき立てた、安定した雇用などの要因に若い彼らは魅力を感じない。ミレニアル世代が重視するのは、経済的な成功ではなくワークライフバランスや目的意識である」というのだ。

 周りを見渡せばこのような若者が多いのではないだろうか。このように、組織の未来を考えただけでも、何が条件になるのか、おのずと見えてくるだろう。

 本書は、未来の一端をつかめるかもしれない、そんなさまざまなキーワードがちりばめられているのだ。