リーダーシップの特性に関する本研究では、28の特性について、男女間で適用に顕著な差異があることが明らかになった。男性には、分析的、有能、運動能力が高い、頼りになる、といった特性評価が与えられることが多い。女性には、思いやりがある、熱心、精力的、整然としている、といった特性評価の傾向が高かった。
この結果と一致するように、米国社会でも一般的に、女性リーダーは男性リーダーより思いやりがあり(全体で最も評価されている特性)、整然としていると考えられている。一方、女性は能力が低い、軽薄、おしゃべり、興奮しやすい、注意散漫、日和見主義、臆病、優柔不断と見なされがちだ。男性は、傲慢、無責任と評価されることが多い。
これらは単なる言葉ではない。従業員と組織に対して、現実的な影響を及ぼすのだ。業績評価で使われる言葉は、組織で何が重んじられ、何が評価されないかを示す。従業員もそれらの言葉によって何が重んじられるかを知り、組織にうまく馴染めるか、昇進する可能性はあるかを考えて決断する。
我々の研究は、公式の業績評価において性差があることを突き止めた他の研究と一致する。複数の調査によれば、女性は仕事の目標や事業成果に関係のない曖昧な評価を下されることが多い。これは女性にとって、就職の機会、昇進、報酬をめぐる競争上の不利になり、仕事における成長やアイデンティティの確立においても足枷となる。
加えて、女性リーダーは矛盾する評価を受けることも多い。「威張りすぎる」とか「強引すぎる」と言われる一方で、「もっと自信を持ち、はっきり物を言うべきだ」とも評される。多くの研究によれば、女性は協働的で集団を重視する場合、有能という評価を受けにくい。しかし能力を強調すると、冷たくて感じが悪いと見なされる。典型的なジレンマに陥るのだ。
我々の発見について、1つ皮肉なことがある。人々が最も重視し、リーダーに求め、優秀なリーダーの条件であると見なしている特性の多くは、女性リーダーが業績評価で与えられる特性なのだ。「思いやり」がその典型である。
では、より多くの女性がリーダー職に就くという結果に至らないのはなぜか。それは、理想のリーダー像を語ることと、実在する人物の業績を性別や理想像にまつわる固定観念に縛られずに表現することは、別物だからである。
男女の役割とリーダーシップに関する根強い社会通念のせいで、ほとんどの人はリーダーを思い浮かべるように言われると、男性リーダーを想像する。同僚間で女性と男性がリーダーらしく振る舞っても(新しいアイデアを提案するなど)、グループ内でリーダーと見なされるのは、女性ではなく男性だ。
人材の適切なマネジメント、ダイバーシティ、インクルージョン(包摂)が叫ばれるこの時代でも、我々の調査が示すように、公式の業績評価システムはいまだに古い偏見の影響を受けている。このことは、女性に対する暗黙のメッセージとなっている。「“真のリーダー”は、あなたたちではない。男性なのだ」と。
HBR.ORG原文:The Different Words We Use to Describe Male and Female Leaders, May 25, 2018.
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