上司に対して部下がアンビバレンスを感じることが、なぜ仕事のパフォーマンスにそれほど大きな悪影響をもたらすのか。我々の見解では、その原因は「認知的整合性」として知られる、社会心理的プロセスにある。

 この理論によれば、人には概して、自分の考えや感情に整合性を求め、不整合を避ける傾向がある。たとえば、自分の考え方と一致しないやり方で行動するときには大抵、気まずく感じる。(喫煙する人は、健康に悪いと知りながら喫煙するだろう。)この気まずさを軽減するために、当初の考え方を変えて、行動に一致させることがよくある(喫煙者は「健康への悪影響は誇張されている」とか、「世の中で起こりうるリスクすべてを避けることは不可能だ」と自分に言い聞かせるかもしれない)。

 アンビバレンスとは、認知的不整合性の一形態であり、心理的に引き裂かれている状態、あるいは、矛盾している状態を示している。典型的に「不愉快だ」と感じる感情だ。社会的関係(たとえば友情や家族の絆)においてアンビバレンスを抱えていると、心臓血管のストレス増加や日常の血圧水準の上昇疾患リスクの増大に結びつくことを示す研究が、この理論を裏付けている。

 我々の研究結果によれば、「上司との関係がアンビバレンスな状態にある」と報告した部下は、「職場で(不安など)ネガティブな感情を比較的よく感じる」と報告する傾向も強かった。この傾向が、仕事のパフォーマンス低下の一因になっているのかもしれない。