幸いにも、部下との関係を改善するために、そしてパフォーマンスへの悪影響を軽減するために、上司が実践できるステップがいくつかある。我々の研究成果に基づき、3つのステップを提案する。

 ●職場の人間関係の本質を理解する

 上司であるあなたは、部下があなたとの関係をどのように受け止めているかを理解したいはずだ。

 上司は、部下が実際に思っているよりも、「部下との関係は良い」と思い込む傾向があるため、他者がどのように見ているかを理解しようと努めることが、第1のステップだ。そこで、部下に具体的に次の点を尋ねるといい。上司との関係をどのように感じているか、十分な信頼関係があると思うか、そして、上司からサポートされ、また意見を聞いてもらえると感じているか、である。 

 ●アンビバレンスからポジティブな感情へ転換する

 アンビバレンスを軽減するために、上司は、ポジティブな交流の頻度を増やすことに注力することができる。また、注目されていないポジティブな側面に目を向けるよう促すこともできる。たとえば上司として、あなたが部下のリクエストを支持したこと、あるいは、部下のアイデアの1つを他の幹部たちと共有したことを、部下に伝えるのもいい。また、部下との関係で改善したと気づいた点に言及してもいいだろう。

 ネガティブな出来事については、きちんと説明することで、部下もそうした出来事がそれほど重要ではないと感じるようになるかもしれない。たとえば、部下のリクエストに応じられない場合は、部下の疑問に耳を傾け、理由を説明するといい。イライラした態度を取ってしまった場合は、締め切りの強烈なプレッシャーがかかっていることを説明するといい。

 ●部下に対処法を提供する

 上司と部下の関係には、アンビバレンスが不可避な場合もあるだろう。上司は、複数の役割をしばしば切り替えて担う必要がある。上司は、友人であり、打ち明け話の聞き役でありながら、時に規則遵守を厳格に求め、またタスクは達人の域に達していなければならない。その関係は、権限の格差と依存度の違いを特徴とする。結果として、アンビバレンスを完全に克服することは難しいかもしれない。

 ただし、我々の研究結果によれば、上司との関係にアンビバレンスを抱いていることが、常にパフォーマンスの低下につながるわけではなかった。チームのメンバーにサポートされていると感じる従業員は、上司との関係にアンビバレンスを抱くことから生じるストレスに、比較的うまく対処することができた。

 同じ上司の下にいるチームのメンバーは、共感やサポート、アドバイスを提供するのに格好の立場にある。したがって、リーダーはチームメンバーたちに互いにサポートし合うよう奨励すべきだ。これには、従業員が安心して、本来の自分でいられたり問題を提起できたりする環境づくりが必要だ。

 総じて、我々の研究結果によれば、多くの従業員は上司との関係にアンビバレンスを覚えている。こうした相反する感情は、全般的に良質と評価される関係においても発生しうる。しかも、アンビバレンスを抱いているときのほうが、上司との関係が悪い場合よりも、パフォーマンスに悪影響を及ぼした。この結果は、上司に相反する感情を抱くことがいかに弊害をもたらしうるかを浮き彫りにしており、極めて重要なポイントだ。


HBR.ORG原文: Feeling Ambivalent About Your Boss Hurts Your Performance Even More Than Disliking Them, June 29, 2018.

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アラン・リー(Allan Lee)
英エクセター大学ビジネス・スクールの上級講師。研究の中心テーマは職場でのリーダーシップと人間関係。

ジェフ・トーマス(Geoff Thomas)
英サリー大学ビジネス・スクールの組織心理学教授。最近の研究テーマはリーダーシップ。特に人間関係をベースとするリーダーシップが、なぜ、いつ、どのように重要な仕事の成果に影響を与えるかの理解を深めるうえで、人間関係に関する科学的知識(リレーションシップ・サイエンス)が、いかに役立ちうるかを探求している。

ロビン・マーティン(Robin Martin)
英マンチェスター大学アライアンス・マンチェスター・ビジネススクールの組織心理学教授。研究の中心テーマは職場での人間関係、リーダーシップ、および影響戦略。

イヴ・ギヨーム(Yves Guillaume)
英リバプール大学マネジメントスクールの組織行動学教授。チームや組織における多様性、リーダーシップ、イノベーション、有効性と健全性の研究を中心に展開している。