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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第83回はレピュテーション(評価)研究の第一人者、ルパート・ヤンガー氏らによる『評価の経済学』を紹介する。
SNSの影響力の大きさが取沙汰されて久しい。故意にせよそうでないにせよ、炎上事件はそこかしこで起き、世の注目を集める。一方、根も葉もない噂が一人歩きを始め、何年経っても蒸し返されるという恐ろしい事態も起きている。日々アップデートされる技術をもってすれば、画像加工も音声加工もかなりの完成度となっており、火のないところに煙は立たぬ、とはもはや言えなくなっている。
これは、個人に限った話ではない。企業もまた、こうした現象を無視できない状況にある。なぜなら、ネガティブな評価は顧客からの信頼をいともたやすく揺るがすからだ。それが会社全体の信頼度やブランドに影響を及ぼす。本書の前書きでも紹介されているように、株価の70~80%はブランドや評判といった無形資産によって決まる。
(ちなみにこのデータの出典は本誌2008年1月号に掲載された「いかに風評リスクをコントロールするか」。通常のリスク管理とは異なる風評被害の難しさと、その対応策について論じており、今なお読まれている論文である)
本書は、このように誰もが評価にさらされている時代に、ゲームのルールをひもとき、行動の指針を示すものである。
まず前半(第1部)では、評価ゲームのルール「行動」「ネットワーク」「物語(ナラティブ)」の3つに分けられると説き、それぞれについて説明していく。たしかに、信頼は行動によってしか培えない。そして伝播力は、行動が伝わりやすいストーリーを伴ったとき、ネットワークの力と相まって爆発的に広まっていく。それを見た他者が評価を下し、その評価が他の評価を呼ぶ。
マーケティング活動に携わっている皆さんならば、自社や製品・サービスについて、正統かつ魅力的なストーリーを描くことの大変さ、重要性を身に染みてご存じのことだろう。
ポジティブな評価をいかに得ていくかについては、仕事としても腕の振るい甲斐があるところだが、問題はネガティブな評価についてである。