『モンスターハンター』シリーズ
プロデューサーのチームマネジメント

 特集3番目の論考は、日本の新しい主要産業であるゲーム産業の事業責任者に依頼しました。大ヒット商品『モンスターハンター』シリーズのプロデューサーであるカプコン常務執行役員の辻本良三氏が、最新作の構想から完成まで多くのメンバーにアイデア創出を促し、結集して、作品にまとめ上げるリーダーシップの要諦を明かしています。

 特集4番目は、会社全体の思考を変革した米国インテュイットCEO、ブラッド・スミス氏の論考です。CEO就任時に、主力製品の変革の必要性を感じ、デザイン主導の会社を目指します。当該の製品開発部門だけでなく、社員全員の思考が変わる必要があると考え、それをいかに実践したかを記しています。

 2つの企業事例で示される通り、アイデアは商品や事業として結実してこそ意味があります。それを実践するのが起業家的なものであるとともに、アイデアこそが未来をつくる企業活動の原動力であると指摘するのが、ピーター・ドラッカー氏です。アイデアの発想法を考えるうえで、あらためて考えておきたい視点として、名著論文を再掲しました。

 今号は後半のHBR論文でも、脳科学をもとに開発した性格テストを活用するチームマネジメントの大型企画を組んでいます。

 巻頭論文では、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)教授であるマイケル・ポーター氏が、学長のニティン・ノーリア氏と共に「CEOの時間管理」を著しています。

 大企業のCEO27人を対象にした、のべ6万時間の実証研究です。CEO職がいかに過酷で、自分の時間を持てないかが分かります。この現実を踏まえて著者たちは、どうすればCEOはより適切な仕事ができるか、理想の時間の使い方を提言します。

 実は著者たちは、もっと長い時間をかけてCEOの活動について研究していて、2004年には論文「新任CEOを驚かせる7つの事実」を発表しています(『[新版]競争戦略論Ⅰ』、マイケル・ポーター著、ダイヤモンド社、2018年に掲載)。

 HBSは、大企業のCEOを対象にしたワークショップを20年以上も続けていて、米国のエスタブリッシュメント層からの厚い信頼があってこそ可能な稀有な実証研究と言えます。

 CEOを対象にした研究ですが、仕事の進め方や時間の使い方についての提言は、あらゆる階層のマネジャーに多くの示唆を与えます。本誌読者の皆様も、将来のことではなく、今日の自分ごとの課題と解決策として読むことができます(編集長・大坪亮)。