イノベーションは、経営者の平均在任期間と同じく、約六年ごとに脚光を浴びるが、そのたびに同じ過ちが繰り返される。しかし、IBMの「ワールド・コミュニティ・グリッド」プロジェクト、バンク・オブ・ボストンの「ファースト・コミュニティ銀行」事業、ティンバーランドの「インベンション・ファクトリー」、シーゲイト・テクノロジーの「ファクトリー・オブ・ザ・フューチャー」などは、過去の失敗に真摯に学び、その教訓を生かした好例である。これらの企業はイノベーションの罠を回避するために、小さなアイデアを軽視しない、製品イノベーションにこだわらない、既存部門と同じように扱わない、他部門で働く人たちの気持ちをおもんぱかる、人間関係とコミュニケーションを重視する、他部門との連携を強化するなど、イノベーションを成功させる対策を着実に実施していた。