アマゾン、グーグル、アップル、マイクロソフト……覇権争いが続くAIアシスタントの実状とその家庭浸透で起きる変化を、最新号では「AIアシスタントが変える顧客戦略」として特集しました。

顧客宅に入り、購入商品を選定
新たな流通革命が始まっている

 アマゾン・ドットコムは先月9月20日、音声に反応するAI(人工知能)アシスタント「アレクサ(Alexa)」を組み込んだ電子レンジや時計など、数多の製品の発売を発表しました。家電や自動車などあらゆる製品がインターネットにつながるIoTにおけるプラットフォーム間の競争に勝つため、同社の規格をいち早く消費者に浸透させる狙いがあると思われます。

 PCの基本ソフト(OS)のようなシステム中枢の規格を誰が握るか。今号は、その覇権争いと同時に変わる顧客戦略についての特集です。

 第1論文「『アレクサ』時代のマーケティング」は最初に、アマゾンのアレクサ、グーグルのグーグルアシスタント(Google Assistant)、アップルのシリ(Siri)、マイクロソフトのコルタナ(Cortana)など、世界を代表するプラットフォーム企業がいかにAIアシスタントの実用化を進めているかを示します。そして、それが進むと、マーケティング、特に顧客獲得、顧客満足、顧客維持という3つの領域で、どのような変革が起きるかを論じます。

 具体的には、AIアシスタントのプラットフォームは、次のような存在になったり、社会に変化をもたらしたりする、と予測しています。

 ・顧客に対する、メディア、販売・流通チャネル、サービスセンターのすべての役割を担う。
 ・個々の顧客の消費行動データをもとに最適な商品を注文し、顧客のコストやリスクを最小化する。
 ・顧客のロイヤルティの対象を、ブランドから、AIアシスタントへと、変える。
 ・ブランド(メーカー)は、顧客との関係強化から、AIプラットフォームでの自社のポジショニングの最適化へと、力点を変える。
 ・ブランド(メーカー)は、その販売促進費の用途を、店舗での販売場所確保のためから、AIプラットフォームでの取扱手数料へ変える。

 AIプラットフォームが、多くの顧客宅に入り込み、"アシスタント"として顧客に代わって、購入する商品を選定・注文し、結果的に、強大な市場支配力を持つということでしょう。本稿では、この変化を1950年代にスーパーマーケットが出現した時と同様の衝撃としています。古い言葉で言えば、新たな流通革命が起きつつあるということです。