ある創業企業の成功と苦境、そして再興の物語
ベルデン研究所は大成功を収めていた。1996年にエリック・ドゥモンピエールが設立してCEOを務めた同社は、肥満治療薬「ムトレックス」の商用化に成功した。ドゥモンピエールは瞬く間にスター経営者となり、企業の社会的責任に関する賞をいくつか獲得した。フルハイブリッド車(低公害車)には、これが人気化するずっと以前に投資していた。森林破壊を止めるためにパリとその周辺に植林をした。従業員に「連帯休暇」(人道的な活動をしている間は給与が完全に支払われる)を付与し、週32時間労働を始めたのも彼である。ドゥモンピエールは従業員に愛され、業界の各種会議や政治フォーラムで称賛され、メディアに取り上げられた。
ところが2000年代の半ばになると、ドゥモンピエールに関する非の打ち所のない評判が非難を受け始める。ベルデンが一部の業務を海外に移し、フランスでレイオフをすることになるのではないかとの不安がささやかれた。次に、ドゥモンピエールの人道主義的なベンチャー企業は、アジアの工場で児童労働者を採用した組織のフロント企業だと暴露された。ムトレックスの深刻な副作用に関する噂が表面化し、役員の一人が自殺したが、その理由や背景はいまだ明らかでない。
それでも、2009年までに、ベルデン研究所とドゥモンピエールはその台風を克服し、利益は爆発的に伸びた。