合成メディアはもはや本物と見分けのつかない領域へ

 オバマ前大統領が「忘れないでいようぜ、××××野郎」と話す動画が出回ったことがある[注1]。もちろん、話しているのは本人ではない。オバマの顔に、喜劇役者ジョーダン・ピールの口(と声)をピタリと重ね合わせてあったのだ。

 その目的は意識向上にある──フェイクニュース現象が動画にまで及んでいること、そして完全に本物そっくりとまではいかなくとも、制作物が危険なほどにリアルになってきていることを、世の中に注意喚起することにあった。

 虚偽のニュースを研究している研究者たちは、以前からこの種の活動を予想してきた。最近、主要なテクノロジスト、サイバーセキュリティの専門家、ソーシャルメディアとプラットフォーム企業の専門家、研究者、ジャーナリスト、人権活動家、映像検証に関する専門家がシリコンバレーに集まりサミットを開催した。目的は、こうした「ディープフェイク」をはじめとする「合成メディア」の悪用に立ち向かう戦略について話し合うことだ。