デジタル活用におけるCFOの3つの役割とは

――では、CFOがデジタル化に対応するには、どのような取り組みが必要でしょうか。

山路 デジタル活用におけるCFOの役割には3つの段階があると考えています(図2)。1つめは「経理オペレーションの最適化」です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などに投資し、記帳、支払い、給与計算などの自動化や管理部門のコスト削減を進める取り組みです。経理財務部門の業務をテクノロジーによって自動化していくことで、次の段階である「事業管理の高度化」に進みやすくなります。

出典:アクセンチュア

「事業管理の高度化」とは、全社横断での業務改革の推進、データの見える化、デジタル/アナリティクスを活用した予算策定の高度化などです。その際、最も重要なのは、情報管理の精度とリアルタイム性を上げること。例えば、この製品はこの国で儲かっているというように大まかな分析ではなく、この国のこのユーザーで儲かっているといったように、より細分化してリアルタイムに情報を管理する。そうすればターゲットが明確になってより的確な投資判断が下せるようになるからです。

アクセンチュア株式会社
通信・メディア・ハイテク本部 財務・経営管理グループ統括
マネジング・ディレクター
高塚 大然(たかつか・たいねん)

同志社大学大学院 経済学研究科卒、税理士試験合格。1998年にアクセンチュア入社後、ハイテク企業、機械メーカー等幅広い業界において、経営戦略からプロセス変革の計画立案・実行、およびシステム化計画・構築まで、多数のプロジェクトに従事。特に決算早期化、グローバル経営コックピット、SSC化、RPA等経理・経営管理部門を中心としたプロジェクトだけでなく、昨今、CFOのデジタル変革支援を行っている。

 そして最後は「事業デジタル化の牽引」。デジタル活用による事業改革や、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進です。

高塚 1つめと2つめは既存事業に関する投資なので、事業部門の理解を得やすいし、投資判断もしやすいでしょう。しかし、最後の「事業デジタル化の牽引」は、従来のROI(投資回収率)では投資対効果を評価できないという難しさがあります。

 そこで、新規事業は、売上高目標が1年後に○億円、2年後に△億円というだけでなく、1年で何人の会員を獲得するか、何人が有料会員となったかなど、事業が成長軌道に乗る前段階のシンプルなKPI(重要業績評価指標)を複数設定し、その達成度で評価することが必要になります。このように戦略的事業に経営資源を的確に配分し、そのパフォーマンスをモニタリング&管理する役割を担うCFOを、当社では「企業価値創出プロデューサー型CFO」と呼んでいます。

山路 KPIの例を1つ紹介しておきましょう。製薬会社では将来の成長のドライバーが新薬の開発サイクルとなるため、AIなどのデジタルテクノロジーに大きな投資を行い、創薬のプロセスを劇的に短縮する取り組みが始まっています。この場合は、新薬の開発リードタイムやAIによるシミュレーション回数がKPIになるわけです。