世界最大級の資産運用会社ブラックロックCEOのラリー・フィンクは、白人男性中心の組織構成を見直すために採用方法を改めることを発表した。この発言は、メディアや批評家を中心に、個人の思想を優先して株主の利益を犠牲にする行為であり、上場企業の経営者がとるべき行動ではないという批判を浴びた。だが筆者は、企業が社会問題に取り組むことは経済的成功をもたらすと証明されており、フィンクへの批判こそが的外れだと異を唱える。


 運用資産6兆円を有する世界最大級の資産運用会社、ブラックロックのCEOラリー・フィンクの先日の発言は、激しい論議を呼んだ。人材多様性を促進するために採用方法を変更し、おそらくは報酬体系も変えることで、5年後には自社が単なる「白人男性の集団」でなくなることを保証する、と述べたのだ。

 これは、彼が世界のCEOに対し、企業は利益の最大化を超えたパーパス(存在目的)を持つ必要があると訴えた年次書簡に続く動きである。

 FOXビジネスによると、批評家たちはフィンクの多様性に関する決意を「企業社会主義」として即座に批判し、「上場企業の経営者が、ビジネス資源とCEOの地位を利用して個人的な方針を追求することは正しいのか」と不満を露わにした。

 FOXの同記事は、デラウェア大学のコーポレートガバナンスの専門家チャールズ・エルソンによる、次のような発言も引用している。「これは基本的に上場企業の役割ではない。また、彼の方針に賛同しない投資家に対して不公平である。経済的利益を生まない可能性のある目標のために、CEOは会社の資金を使うべきではない」

 私は、これに強く反対する。社会問題に関する事項(多様性だけでなく)は、企業の経済的成功には関係ない――この時代遅れで間違った考えを、ビジネスリーダーはそろそろ完全に捨てなければならない。

 私自身も白人男性なので、なぜ白人男性が多様性の問題に防御的な反応を示すのかは容易に理解できる。しかし私たちは、ビジネスが社会の健全性に影響を与えず、影響を受けもしない「真空状態」に存在するかのように振る舞うことは、やめるべきだ。むしろ、社会問題に対する取り組み方が、企業の経済的成功を大きく左右することを示す証拠は増えている。