データの利活用が意思決定の成否を左右するいま、良質なデータを大量に保有することは国と企業の競争力に直結する。筆者らは、これを国別で評価するという壮大な取り組みを実施した。その結果、デジタルエコノミーを基本とする新たな世界では、従来とは異なる勢力図が描かれることが判明した。


 データの生成でトップに立っている国はどこか。マッキンゼーの推定によれば、人工知能(AI)が搭載されたデータ主導型のアプリケーションは、2030年までに13兆ドルのグローバルな経済活動を新たに生み出すとされ、次の世界秩序はデータの生成によって決まる可能性がある。これは、20世紀の経済大国の出現に石油が果たした役割と同じである。

 AI超大国の座には、中国と米国が収まるのかもしれない。しかし石油主導型経済とは異なり、データソースを限られた地点に集中させることはできない。多種多様なソースが必要であり、未来のAI搭載アプリケーションが、予期せぬ新たなプレイヤーから出現することもある。とりわけ、データは驚異的なペースで生成されていることから、形成されつつある新しい世界秩序は、単純な二極構造より複雑なものになる可能性が高い。