ビッグデータを活用すれば何でも改善できる。そう考えている人もいるのではないか。その対象として人事も例外ではない。だが筆者は、人事はそもそも、ビッグデータを持ったことがないと指摘する。また仮に十分なデータを持っていたとしても、人事部門で高度な分析を行う意味に疑問を投げかける。本記事では、人事の現実に沿ってデータを活用する方法を提示する。


「ビッグデータ」という言葉を至る所で耳にするようになり、いまやあらゆる事業部門が、オペレーションの向上にビッグデータを活用する計画を策定しなければならない、と感じている。

 人事部門も例外ではない。企業の多くの予算が投じられ、そうするだけの真の価値がある(と信じたい)部署なのだから。

 人事部門でビッグデータが特に注目されているのは、より分析的になるべきだという重圧にさらされているからである(ある程度、的を射た意見だ)。

 希望的観測を持つ人々は、ビッグデータ技術を適用すれば人事部門のよからぬ特性を排除できると信じている。たとえば、人事部門は「ソフト」に注力していることを理由に投資利益率を説明していないではないか、という不満をかわせるようになるというのだ。

 ビジネスで「次の大ブームは何か」という話の例に漏れず、ビッグデータも、ある領域ではきわめて重要だが、他の領域ではそうでもない。

 文字通りの定義によれば、人事部門はビッグデータを持っていない。あるいは、もっと正確に表現するなら、ほぼ一度も持ったことがない。

 ほとんどの企業の従業員数は数百万ではなく数千であり、従業員評価はいまもたいてい、年に1度行っているにすぎない。この規模ならば、人事部門がビッグデータ用の特別なソフトウエアやツールを使う理由は皆無に等しい。