では、人事部門はデータセットを整えたあと、何をすべきなのか。データ分析をするときは必ず、基本から始めると効果的である。

 まずは、全体像を把握しよう。組織全体の過去から現在までの業績を表す図表がよいだろう。離職率が極端に高いのはいつか。それはなぜか。社員がたえず苦情を訴えている部署はあるか。

 次に、こうしたデータをより多く、よりひんぱんに見るとよい。たとえば、年に一度だけ実施している冗長かつ退屈な従業員意欲調査を、パルス調査(ときには毎日行うなど、短期に素早く行う調査)に移行するのもいい考えだ。IBMのような賢明な企業は、会社が提供するソーシャルメディアで従業員がつくり出すデータを収集して、従業員の意欲をモニターし、職場の問題点を突き止めている。

 最後に、人事部門はデータ間の相関性を分析すべきだ。まずは、採用基準がどのように実際の業績と関わりがあるかを調べよう。これが重要な理由は、採用が組織の行う最も重要な(しかも、頻度の高い)仕事だから、というだけではない。保護対象となるグループに不利にならない採用基準を用いる必要があるからだ。

 結局のところ、すべてはデータの質から始まる。たとえば、人事評価の結果が実際の業績を的確に表していないと思っているのなら、どの従業員が優秀なのかを予測分析する意味などないだろう。


HBR.ORG原文:There’s No Such Thing as Big Data in HR, June 02, 2017.

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ピーター・キャペリ(Peter Cappelli)
ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのジョージ W. テイラー記念経営学講座教授。同校人材センター所長。Will College Pay Off?(未訳)など複数の著書がある。