ハーバード・ビジネス・レビューが厳選する「EI(感情的知性)シリーズ」、最新刊のテーマは『オーセンティック・リーダーシップ』。偉大なリーダーを真似るのはなく、地位を装うのではなく、偽りのない自分らしいリーダーシップがいま求められている。


 かつて、優れたリーダーには類型がありました。IBMのルー・ガースナー氏、GEのジャック・ウェルチ氏、日本で言えば、パナソニックの祖・松下幸之助氏、ソニー創業者・盛田昭夫氏といったカリスマを思い浮かべることができるでしょう。そうした偉大なリーダーたちを要素分解し、学んでいく時代もありました。

 しかし昨今では、誰かを真似るのではなく、真正で、嘘のない、自分らしさを大切にする「オーセンティック・リーダーシップ」に注目が集まっています。自らの価値観や人間性に忠実なリーダーシップこそが真正のものであり、職場で自分をさらけ出せるリーダーが皆の信頼を勝ち取るというのです。

 これは、リーダーの権力が肩書きや地位で決まっていた時代への反動とも言うべきもので、2008年の世界金融危機を境に、ますますその傾向は強くなっています。実際に会社組織はよりフラットに、ネットワーク型に進化しており、トップダウン一辺倒では人を動かすことはできなくなってきています。

 とはいえ、過度に自分のスタイルにこだわることは、リーダーとしての自身の成長を阻害しかねません。何事にも、複合的な視点が必要となります。

 本書では、ハーバード・ビジネス・スクール教授でオーセンティック・リーダーシップの大家であるビル・ジョージ氏、同教授でいまホットな視線を集めるフランチェスカ・ジーノ氏、『誰もがリーダーになれる授業』著者でINSEAD教授のハーミニア・イバーラ氏、ロンドン・ビジネススクール教授のロブ・ゴーフィ氏など、世界有数のビジネススクールの第一人者たちが、この新しいリーダーシップについて、本質やメリット・デメリットを説いていきます。

 さらに、今回の日本語版への序文は、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターであり、チームボックス代表取締役、ビジネス誌にもしばしば登場する中竹竜二氏。ご自身のリーダーとしての経験から得た教訓、そしてリーダーシップ開発の探求を進めるなかで得られた知見を、ご披瀝いただいています。

 SNSの発達でカリスマのベールがはがれやすくなり、リーダーを"装う"ことへの嘘くささが敬遠されているということもあるでしょう。信頼・信用に人が集まる時代、リーダーの「オーセンティシティ」が問われる今だからこそ、必読の1冊です。

 EIシリーズのラインナップについては、EI特設サイトをご覧ください。