社員間のデータを活かす
「こちらには裏付けになるチャートもある、グラフもある。じゃまをするな」
数年前、グーグルのピープルアナリティクス部門に新たに採用された人たちに、このようなノートPC用ステッカーが配られるようになった。おそらく、同部門の業務を正当化する必要性に迫られての策だったのだろう。当時はまだ、ピープルアナリティクス(社員データから抽出した統計学的な知見を用いて、人材管理の意思決定を行うこと)は挑戦的なアイデアであり、会社の前に人間が単なる数字に成り下がるのではないかと危惧する懐疑派が多かった。人事部はもともと社員のデータを集めてきたが、それを積極的に掘り下げて社員の理解と管理に役立てるという考え方が斬新であり、疑念を呼んだのである。
だが、もうステッカーは必要ない。いまや70%以上の企業がピープルアナリティクスの優先度は高いと考えている。それどころか、この領域では特筆すべきケーススタディも生まれている。たとえばグーグルの「プロジェクト・オキシジェン」は、巨大ハイテク企業である同社の最も優秀なマネジャーらが実践する手法を明らかにし、それらが成績不振者の仕事を改善するコーチングセッションに反映された。ほかにも、営業チームの成功率の向上という結果を残したデルの実験なども、ピープルアナリティクスの威力を示すものだ。