企業はますます、多様性に富むチームの力に期待し始めている。ただし、単に性別や文化的背景が異なる人材を寄せ集めたところで、成果を上げることは難しい。メンバーの能力を最大限に引き出し組織のパフォーマンスを高めるには、インクルーシブ(包摂的な)・リーダーシップを実践する人材が不可欠である。包摂的なリーダーが備える6つの特性と、チームの文化をインクルーシブに変える4つの方法が示される。


 企業はますます、多様性に富む分野横断的なチームを頼みとするようになっている。女性と男性、文化的背景の異なる人々、若手と年配の働き手の能力が結集されたチームだ。

 だが、さまざまな人々を単に集めて混在させるだけでは、優れた成果は保証できない。そこには「包摂的(インクルーシブ)なリーダーシップ」が必要とされる。それによってチームメンバーの誰もが、自分は敬意を持って公平に扱われ、尊重され、チームに帰属し、自信があり、触発されている、と確信することができる。

 包摂性は、チームにとって「あるに越したことはない」という程度のものではない。我々の研究からは、それがパフォーマンスを直接的に高めることが示されている。

 包摂的なリーダーを擁するチームは、高いパフォーマンスを実現していると回答する傾向が17%高く、質の高い意思決定を下しているという回答の傾向は20%高く、協働的であるという回答の傾向は29%高かった。別の研究ではさらに、職場が包摂的であるという従業員の認識が10%高まると、年間の出勤日数が1人につきほぼ1日増え、常習的欠勤のコストが減ることが明らかになった。

 リーダーがより包摂的になるためには、具体的にどうすればよいのだろうか。

 我々はこの疑問に答えるために、4100人超の従業員に包摂性についてアンケート調査を行い、部下に「非常に包摂的である」と認定された人々から聞き取り調査を行い、リーダーシップに関する学術文献を検証した。この調査を通じて、17の異なる行動様式を特定し、それらを6つのカテゴリー(ここでは「特性」と呼ぶ)に分類した。いずれの特性も、等しく重要で互いに強化し合うものだ。

 そこから我々は360度評価ツールを開発し、これらの特性がリーダーに備わっているかを部下が評価できるようにした。このツールは、これまでに3500人超に利用されており、450人超のリーダーを評価している。その結果は示唆に富むものであった。

 包摂的なリーダーとそうでない人の違いとして、我々が認めた特性もしくは行動とは、次の6つである。

目に見えるコミットメント:多様性への本気の取り組みを明言し、現状に疑問を投げかけ、他者に説明責任を課し、多様性と包摂を自分の優先課題としている。

謙虚さ:自分の能力に関して謙虚であり、過ちを認め、部下に貢献の余地をつくる。

バイアスへの認識:個人には盲点があること、そしてシステムには欠陥があることを認識し、実力主義を徹底するために尽力している。

他者への好奇心:他者にオープンな姿勢と強い好奇心を示し、人の言葉に是非を問わずに耳を傾け、共感を持って周囲の人を理解しようと努めている。

文化的知性:他者の文化に配慮し、必要に応じて適応している。

効果的なチームワーク:部下に権限を持たせ、思考の多様性と心理的安全性に気を配り、チームの結束に重点を置いている。