大きな事故や失敗を経験すると、人はそこから多くを学ぶ。だが、より重要なのは、そのリスクを事前に察知して防ぐことではないか。そのためには、問題に気づいた従業員が安心して声を上げやすい文化をつくることが不可欠である。ピクサーやトヨタなどの実践例を紹介しながら、組織文化を仕組みで変える方法を示す。


 文化を変えるために必要なことは何か。その答えは「大惨事」であることが多い。

 ボーイング737MAXの2度の墜落事故を受け、同社のフライトシステムの行きすぎた自動化が、一時的に非難された。だが、新たな注目が製造施設に向けられることは、おそらく避けられないだろう。

 徐々に明らかになっている証拠によれば、問題を抱えたサウスカロライナ州のボーイング787ドリームライナー工場では、従業員が無茶な製造スケジュールを守るよう強いられ、疑問を呈したら職を失うと恐れていたという。

 これは、心理的安全性――報復を恐れることなく声を上げ、アイデアを出し、問題を指摘し、悪いニュースを伝えることができるという保証――の欠如が、いかに悲惨な結果を招くかを示す典型的な事例だ。

 墜落事故とそれに伴うメディアからの注目は、ボーイングにとって真の警鐘となる。それによって同社はこれから、オペレーションのあらゆる側面を見直すことになるものと私は期待したい。

 だが、求められる対応はオペレーションの修正だけではない。必要なのは、全面的な企業文化の変革に他ならない。

 しかし、壊滅的な事故が(しかも2度も)起こらなければ経営幹部は文化について真剣に考えないというのは、どれほどひどい話だろうか。そして悲しいことに、たいていの場合、組織文化の徹底的な変革はこのような形で生じている。目に見える大失敗や悲惨な出来事の「後に」成されるのだ。