現在、採用候補者との面接方法における大きな問題の一つとして、プロセスがほとんど体系立っておらず、質問を面接担当者の思いつくままに任せていることが挙げられる。これがどれほど非効率的か、そしてバイアスのかかった意思決定につながるのかは、容易に理解できるはずだ。面接担当者が、自分の個人的な選好に相手が合っているかを確認するために発言したり、情報を引き出したりするのである。

 ここでは、ビデオ面接やデジタル面接が役立つだろう。デジタル面接ならば、この種の欠点のほとんどを取り除くことが可能だ。高度に体系化、標準化された面接を行うためにテクノロジーを使えば、候補者全員が同一の質問を受け、自分の能力について話す機会を同一に与えられる。そうすれば最終的に、ビデオによる予測の有用性が向上する。

 デジタル面接は、候補者にはより公平な面接体験を、組織にはより多様な人材に触れる機会をもたらす。その一方で、デジタル面接を見て検討する際には、また同じ問題にぶつかる。採用の決定を下すのは依然として、バイアスを持った人間だからである。

 しかし、もし人工知能(AI)や機械学習のアルゴリズムに、面接ビデオのデータマイニングを実行させて、採用面接中の振る舞いや発言と、性格や能力、仕事ぶりとの間に、信頼できる関連性を見出すことができたらどうだろうか。

 デジタル面接の場合、AIのアルゴリズムが、発言の内容や話し方に加えて、候補者の表情やボディーランゲージもマイニングすることが可能である。この種のあらゆるデータをマイニングすれば、候補者の能力に関する多くのことを明らかにできるようになり、どのような業績を上げそうかの見込みを示すことができる。

 この分野の科学的研究はまだ初期段階だが、興味深く将来有望な発見が、すでにいくつかある。たとえば、研究者たちは性格特性を正確に予測する手段として、個々人ののさまざまな特徴(声の高さ、大きさ、強さ)、体の動き(手ぶり、姿勢など)、顔の表情(喜び、驚き、怒りなど)をマイニングするアルゴリズムをトレーニングしている。性格特性は、仕事ぶりを予測する主たる判断材料の1つだからである。

 研究者たちはさらに進んで、仕事で成果を上げるうえで欠かせない行動や資質を予測するために、他にも同様のシグナルをマイニングしている。すなわち、コミュニケーション能力や説得力、ストレス耐性採用適性リーダーシップなどである。

 このテクノロジーが発揮しうる洞察力の真価について、ある研究チームは、さらなる解明を進めた。電話会議で話をする際のCEOの情動性を、前述したテクノロジーを駆使して定量化することで、その後の企業業績を正確に予測したのである。

 AIには、人材の見極め方を大幅に向上させる可能性がある。人材の潜在能力を正確に予測するためのコストを下げると同時に、人間の判断力をしばしば鈍化させる、ヒューリスティックスとバイアスを取り除くことができるからだ。

 AIのアルゴリズムは、人間の潜在的な特性や実体のない特性を見出して測定できるという事実、そして先に述べた発見に対して、懐疑的になる向きもあるかもしれない。しかし、留意すべきことがある。人間はごくわずかな言語行動や非言語行動から、相手の性格知性を正確に判断できる、ということを証明する科学的研究は数多くあるのだ。

 AIのアルゴリズムは、人間が使うのと同じ手掛かりを活用しているにすぎない。人間とAIの違いは、AIならばそれを大規模に実行したり、自動化したりできることだ。さらに付け加えると、AIには抑える必要のあるエゴがない。

 現在、多くの組織がデジタル面接を導入しているが、このようなAIの強力な分析能力を活用していない。採用担当者がアルゴリズムからの推薦を受け入れたがらないことが多く、みずからの短絡的な判断に頼り続けるからである。

 残念なことに、この無知が候補者と組織の両方に害を及ぼしている。直感や本能ではなく、科学とデータが採用判断の基礎になるべきだと気づいた人事部が、最高の人材を惹きつけ、つなぎとめるだろう。