●安定感の管理
フリーランスになるとはすなわち、企業から一般的に提供される安定感の多く(たとえば安定した仕事や、明確で当てになる賃金など)を手放すことだ。
我々の調査で、直面している最大の難問について尋ねたところ、フリーランス・コンサルタントの半数は、予測が不可能であること、安定感の不足、そして変動幅の大きさを挙げた。回答者の一人は、「次のプロジェクトを確保することにたえず気をもんでいる」と説明した。別の一人は「変動する収入、潤沢と欠乏」のサイクルに苦しんでいると記述した。
組織に専従しないフリーランスは、自分自身で安定感を生み出す方法を見つけなければならない。
●バックルーム業務の管理
フリーランスのプロフェッショナルは、すべてのことに自力で当たる。会社にいれば他の部署やスタッフが対処する管理上、組織上のバックルーム業務もこなさなければならない。
回答者の一人は「『雑務』(総務やミーティングの設定など)へのサポートが限られている」とコメントした。別の一人は「ビジネスと収入源を構築するのに時間がかかる」ことがあると説明した。結果的に、多くのフリーランスは「常時営業モード」にあり、それが疲労困憊の原因になりかねない。
こうしたバックルーム業務の管理には、かなりの時間と、これまで専門分野で培ってきたスキルとは異なるスキルが必要になる。そのため、フリーランスのプロフェッショナルが「自分の真の仕事」と考えることを達成する妨げになるおそれがある。
●孤独感の管理
ギグワーカーになれば自由と自律を得られる一方、多くの場合は一人で働くことにもなる。
そのライフスタイルは、フリーランス・コンサルタントの一人によれば、「時には、ちょっと孤独になることもある。顧客チームの中で働いている場合でも、自分のチームと一緒にいるようなわけにはいかず、完全にはリラックスできない」。他の多くの回答者も同様に、互いにアイデアを出し合ったり、慰め合ったりする同僚がいない寂しさに言及していた。
孤独感の管理は、ギグ・ワーカーになる際の想定外の課題の一つだ。
●ブランドの管理
会社に勤務すれば、市場で効果を発揮するブランドが手に入る。マッキンゼーのコンサルタントという肩書きがあれば、潜在的クライアントにとっても、自分自身にとっても、アイデンティティは明確だ。フリーランスになることは、このブランドを放棄することを意味する。
調査回答者の中には、「明確なキャリアパス」の欠如や、将来、自分が何をしているか、どうなっているかについて、明確な展望が描けないという課題に直面している人もいた。また、自分の将来性や価値をクライアントに伝えることに悪戦苦闘している人もいた。
前述の科学者ヘンリーも、プロフェッショナルとしての自分の価値や値打ちをクライアントにたえず教えているという。結果的に、「『よし、この件は喜んでお支払いしましょう』と(顧客が)言い出すまで、せっせと足を運んで無料アドバイスを提供する」ことに時間を費やしているそうだ。
単独で働くとはすなわち、プロフェッショナルとしてのアイデンティティと個人としてのブランドを開発し、持続し、伝える任務を独りで負うことである。