こうしたプログラムは幸先のよいスタートを切っているが、すべてを解決しているわけではない。労働市場に再参入しようとする何百万人もの人々のほんの一握りをとらえたにすぎないし、復職する人はやはり、同僚より給料が安いとか離職前より地位が後退しているという現実にぶつかるかもしれない。
だが、こうしたプログラムを迅速に向上させるべき、差し迫った状況がすでに視界に入ってきている。はるかに大きい、新たな波が押し寄せようとしているのである。
多くの女性が(そして男性も)まもなくキャリアを一時、中断しようとしている。実にミレニアル世代の男女の84%が、キャリアのどこかの時点で、子育てやその他の理由で「かなりの」期間、仕事を離れると言っているのだ。現時点で職場復帰へのコースを構築している企業こそが、これから起こる事態をチャンスとして活用できることになる。
場合によっては、将来のリーダーまで発見できるかもしれない。たとえば、カレン・サンデラムを採用したUBSのように。
ニュージャージー在住のカレンは、9歳を筆頭に4人の子どもを持つ母親だが、2017年秋のUBSのリターンシップ・プログラムに参加し、そのままエグゼクティブ・ディレクターとして入社した。2015年に彼女がモルガン・スタンレーを退社したときよりも、1ランク上の役職だ。「一生、家にいるなんて考えられなかった」と言う彼女だが、復職者のためのプログラムがあることを知っていたから、安心して2年半、職を離れることができたのである。
冒頭のハギット・カツェネルソンの話に戻ると、彼女はパス・フォワードが主催するイベントに参加した後、昨年9月にウォルマートが設けた第1回のリターンシップ・プログラムの32名に選ばれた。パス・フォワードは、ネットフリックスやSAP、ウォルマートといった企業のリターンシップ・プログラムの開発に協力している非営利団体である。
このイベントのおかげで、カツェネルソンの5年にわたる求職活動は、ようやく終わった。彼女はただちに、ウォルマートのサニーベール支店の上級プロダクト・マネージャーとして採用されたのだ。「自分の実力を示すチャンスがきた」と、彼女は言う。
彼女は仕事に復帰できたことを喜んでいるが、いまなお、閉じたドアに頭を打ちつけている人がたくさんいることも知っている。「セッションには500人の女性が参加していた。皆、キャリアを中断した後で復帰を願っている。とても心が痛んだ。『人材不足だ』と言う業界がある一方で、これだけの人が職場復帰のチャンスを待っているのだから」
HBR.org原文:Helping Stay-at-Home Parents Reenter the Workforce, June 07, 2019.
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ジョアン・リップマン( Joanne Lipman)
作家。著書にThat’s What She Said(未訳)がある。 ガネットの前最高コンテンツ責任者で、同社の『USAトゥデイ』紙、および109の地方紙からなるUSAトゥデイ・ネットワークの前編集長。