興味深いことに我々のデータでは、女性に自己評価をしてもらうと厳しい採点をつけることが示されている。

 我々はここ数年の間に、数ある項目の中でも特に、自信を測る自己評価法を開発した。キャリアを通じての自信のレベルに関するデータを2016年から集めてきたところ(現時点で男性3876人と女性4779人)、面白い傾向に気づいた。

 自信に関する男性と女性のスコアを比べると、25歳未満の人々の間で大きな違いが見られる。おそらく、この世代の女性リーダーは、自分が思っているよりはるかに有能である一方、男性リーダーは自信過剰で、実際よりも自分は有能だと思い込んでいる可能性がきわめて高い。

 40歳で、自信のスコアの差はなくなる。一般的に、人は年齢を重ねるにつれて自信を増す。しかし驚いたことに、60歳を超えると、男性の自信は低下するのに、女性の自信は増加するのだ。

 我々のデータによると、25歳から61歳以上になる間に、男性の自信は8.5パーセンタイル伸びるが、女性の場合は29パーセンタイル伸びる(注:我々のデータはそう示している。ただし、キャリアの早期に女性が本当に自信に欠けるのかどうかに関する研究には、異なる結論に至ったものがあることも認識している)。

 これらの発見は、次のような別の研究結果とも合致する。女性は男性に比べ、求人に対して応募要件の大部分を満たしているという自信がなければ、応募する可能性が低い

 ある男女が同じような資格や経歴を持ち、どちらもワンランク上の職務にふさわしい経験がない場合、両者は自分の昇進適性に関して異なる結論に達する。男性は、新しい職務に就いてからでも自分に欠けているものを体得できると考える傾向が強い。「大した差はない」と自分に言い聞かせる。これに対し、女性は不安に感じる傾向が強く、そのような状況に進んで身を置こうとしない。

 ここから、次の可能性が考えられる。女性は若いときに自信がないことが動機となって、もっとイニシアチブを取り、もっと打たれ強くなり、他者からのフィードバックをもっと受け入れようとする意欲につながる。それらが長期的に、リーダーとしての有能性を高める要因となっているのではないだろうか。

 総合的なリーダーシップ能力に関する女性の自己評価も、年齢を重ねるにつれてスコアが上がっていく傾向が見られる。

 下図で示すのは、男性4万184人と女性2万2600人を対象に、リーダーシップ能力の予測因子となる49の行動特性に基づく総合能力のスコアを測定した調査のデータである。ここでも、若い女性は男性よりも自分をかなり低く評価しているが、スコアは年を取るにつれて上昇し、最終的には男性のスコアを上回っている。

 このデータも、我々が過去の調査で導き出した結論を裏づけている。

 すなわち、最も身近でともに働く人々の評価によれば、女性は有能なリーダーになることができる。彼女たちの足を引っ張っているものは、能力の欠如ではなく機会の欠如なのだ。機会が与えられれば、女性は男性と同様に高い職位で成功を収めることができるだろう。

 注意してほしいのは、我々のデータの大部分が、現在と過去の行動と実績に関する評価であるという点だ。これは、高い職位への異動や、より大きなリスクテイクを伴う昇進判断とは異なる。

 こんな場合を考えてみよう。同等の職位で働く100人のうち96人を男性が占めており、誰を昇進させるかをあなたが検討していて、有力候補として男女1名ずつがいる。あなたは、どちらを昇進させたいだろうか。男性を選んだほうが無難だと思うかもしれない。

 リーダーは、自分の組織で何が女性の昇進を妨げているのかを、真剣に見極める必要がある。女性は上級職に向かないという無意識のバイアスは、明らかに大きな影響を及ぼす。組織は、採用と昇進の判断方法を変え、条件を満たしている女性候補がしっかり検討対象となるよう万全を期すことが不可欠である。

 これらの意思決定に携わる人はいったん立ち止まり、次のように自問すべきだ。「自分たちは無意識のバイアスに影響されていないか?同じくらい有能な女性がいるのに、自動的に男性に決めていないか?」

 また、自信に関する我々のデータで示されているように、組織が女性をもっと励ます必要がある。リーダーは女性に当人の有能さを信じさせ、キャリアのより早い時期に昇進を求めるよう、後押しできるはずだ。


HBR.org原文:Research: Women Score Higher Than Men in Most Leadership Skills, June 25, 2019.

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ジャック・ゼンガー(Jack Zenger)
リーダーシップ育成コンサルタント会社、ゼンガー・フォークマンの共同創設者兼CEO。『ハーバード・ビジネス・レビュー誌』掲載の論文リーダーシップ・コンピテンシー強化法(DHBR2012年2月号)およびSpeed(未訳)の共同執筆者。ツイッターはこちら

ジョセフ・フォークマン(Joseph Folkman)
リーダーシップ育成コンサルタント会社、ゼンガー・フォークマンの共同創設者兼社長。『ハーバード・ビジネス・レビュー誌』掲載の論文「リーダーシップ・コンピテンシー強化法」(DHBR2012年2月号)およびSpeed(未訳)の共同執筆者。ツイッターはこちら