社員のあいだで知識の共有が進むと個人や組織のパフォーマンが高まる。経営者やマネジャーはそれを期待しており、さまざまな試みをやっているものの、期待通りの成果を上げている企業は少ない。彼らはなぜ、自分の中だけで知識を溜め込んだり、隠したりするのだろうか。オーストラリアと中国の知識労働者を対象にした調査に基づき、社員間での知識共有を促すために重要な3つのポイントが示される。
会社は社員に対して、知識の共有を求めるものだ。
知識の共有が個人やチームや組織の創造性とイノベーション、そしてパフォーマンスを高めることは、複数の研究からわかっている。だが、オフィスをオープンな設計にするなど、さまざまな試みがなされているにもかかわらず、知識の共有が進んでいない会社は多い。社員による「知識の溜め込み(knowledge hoarding)」とか「知識隠し(knowledge hiding)」と呼ばれる現象だ。
彼らは何も知らないふりをしたり、しらばくれたり、共有すると約束しながら実行に移さない。実際にはできるのに、物理的に無理だと言うときさえある。
なぜだろうか。私たちの研究(3月に『ジャーナル・オブ・オーガニゼーショナル・ビヘイビア』誌に掲載された)では、社員が知識を共有するかどうかは、仕事のタイプに左右されることがわかった。
具体的には、複雑だと感じられる仕事(複雑な問題を解決するために大量の情報処理が必要な仕事)は、社員の知識共有を促す傾向がある。多くの自己裁量が認められる仕事もそうだ。管理職がこうした側面に注目すれば、社員の知識共有を促し、知識の溜め込みを減らすことができるだろう。
私たちの発見は、2つの調査に基づく。一方は、オーストラリアにある複数の組織の知識労働者394人を対象にした調査で、もう一方は、中国のある出版社の知識労働者195人を対象にした調査である。
そこで私たちは、自分の仕事はどのくらい要求が厳しいと思うか、どの程度の裁量が認められているか、そして仕事上どのくらい同僚から頼りにされているかを聞いた。また、知識共有のモチベーションについても質問した。そして数ヵ月の時間を置いてから、実際に同僚と情報を共有した/隠した頻度と、受け取った知識がどの程度の役に立ったかを聞いた。
その結果、主に3つの発見がもたらされた。第1に、人が情報を共有したり隠したりする理由は多種多様であること。第2に、要求が厳しく、自己裁量が大きい仕事をしている人は、より情報共有に前向きであること。第3に、同僚が自分を頼りすぎていると感じるとき、人は知識を隠す可能性が高いことだ。
以下に、もう少し詳しく説明しよう。