ビジネスの意思決定を下すうえで、データの存在は不可欠である。ただ、せっかくの貴重なデータも、その処理が不適切であれば何の役にも立たない。多くの企業がデータ処理は人間が行うべきだと考えているが、人間の関与で生まれるバイアスを排除するためには、処理の段階からAIを取り入れるべきだ。このように「データ主導」から「AI主導」に移行することが人類の次なる進化の形であると、ネットフリックスでバイスプレジデントを務めた筆者は主張する。
多くの企業は、経営上の意思決定において「データ主導」のアプローチに適応するようになった。データは意思決定を向上できるが、そこから最大の成果を得るには適切な処理機能が必要である。
多くの人は、その処理を行うのは人間であると思っている。「データ主導」という言葉からは、データとは(最終的に)人間によって処理されるものであり、そのためにデータを精選し要約する作業も、人間によって人間のために行われる、というニュアンスさえ感じられる。
だが、企業がデータに含まれる価値を十分に活用するためには、人工知能(AI)を自社のワークフローに取り入れ、時として私たち人間の手を排除する必要がある。データ主導のワークフローから、AI主導のワークフローへと進化させる必要があるのだ。
「データ主導」と「AI主導」の区別は、単なる言葉上のものではない。それぞれは異なる資産を反映しており、前者はデータを、後者は処理能力を重視している。データには、よりよい意思決定を可能にするインサイトが含まれている。一方、処理とは、それらのインサイトを抽出し行動につなげるための方法である。
人間とAIはどちらも処理機能を果たすが、両者はまったく異なる能力を備えている。それぞれの最適な活用方法を理解するためには、私たち人間の生物学的進化と、産業界における意思決定の進化を振り返るのが有益である。