米国社会は実力主義であり、いい仕事に就くために重要なのは個人の努力と能力である。残念ながら、その言説を否定せざるをえない結果が導かれた。筆者らが法律事務所を対象に、出身階級と性別のみに違いが見られる履歴書を送ったところ、上層階級出身の男性が圧倒的に優遇されたのである。興味深いことに、単に上層階級であることが評価されたのではなく、それが女性である場合は不利な判断を下された。
毎年秋になると、何万人もの法科大学院生が、米国内の一流法律事務所で翌年夏にアソシエイト(見習い)職を得ようと競争する。その枠は数少なく、誰もが欲しがっている。
ここでの勝ち負けの差は大きい。なぜなら、このような稀少なインターン職に就ければ、法科大学院の卒業後に、その法律事務所でフルタイム勤務できることが保証されたも同然だからだ。
その後は年棒10万ドル以上という巨額の報酬が待っている。すなわち、若い学生が卒業後いきなり全米でトップ5%の家計所得水準になり、他のセクターで法務関係の職に就いた場合と比べて収入が4倍になることがしばしばある。また、そのような実績があると、民間セクターでさらに高収入を得られる仕事、そして司法や政府の要職への門戸が開く。
こうした理由で、一流法律事務所に勤務する人は法曹界のトップ1%と言われる。
ここで、インターン職に応募した4人の候補者を想像してほしい。4人とも同じ「二流の上位」程度の法科大学院に通っている。成績は皆素晴らしく、学校の法学雑誌に載ったことがあり、法務と関連性の高い職務経験を持っている。4人の違いは性別と、課外活動に見て取れる彼らの出身階級――上層階級か下層階級か――だけである。誰が面接に呼ばれるだろうか。
この質問に答えるべく、我々は一連の研究を行い、『アメリカン・ソシオロジカル・レビュー』誌の2016年12月号で結果を報告している。筆者の1人が行った以前の研究では、一流の専門サービス企業による採用は、裕福な家庭出身の応募者にかなり偏っていることが示された。我々はこれを踏まえ、応募者の出身社会階級は、面接にこぎつけるうえで決定的な役割を果たすと予想した。
そして実際に、次のような結果が見出された。米国では、いい仕事に就くために重要なのは個人の努力と能力であり、家柄ではない、と言い伝えられている。だがそれとは対照的に、一流雇用主による採用では社会階級に基づく差別が根強く、上層階級出身者がひいきされるのだ。
ただし、我々の研究結果では、意外かつ憂慮すべき歪みも明らかになった。上層階級出身であることが有利に働くのは、男性のみだったのである。