経営者は、社員と社員、社員と顧客のつながりをより密接にするために、テクノロジーに莫大な投資をしている。しかし、その成果を思うように上げられていない企業も多い。A.T.カーニーでマネージング・パートナーを務める筆者は、社員の仕事の「喜び」を増幅させる取り組みが、その解決策になると主張する。同社が実施した調査から、喜びという感情がどのように生まれるのかを明らかにし、リーダーが喜びを増幅させるために何をすべきかを示す。
ビジネス目標の達成において、いままでも今後も肝要なのは、人間の昔ながらの欲求である。デジタル時代の眩惑と希望のさなかでは、このことは忘れられやすい。
たとえば現在の企業は、社員同士、および社員と顧客やその他の利害関係者との、より密接なつながりを可能にするテクノロジーに多大な投資をしている。けれども、自社の文化がその妨げとなって悪戦苦闘している企業はたくさんある。
たとえば、階層やサイロ(縦割り組織の壁)があまりに多い。そして自分の「安全領域」に留まりたがる人、自分のKPI(重要業績評価指標)に満足しきっている人、新しいつながり方と働き方に抵抗する人も、あまりに多いためだ。
これは深刻な問題である。そこで大きな解決策の一つとなりうるのは、「喜び」である。それには2つの理由がある。まず、人は本来的に喜びを求める。そして喜びは、他のいかなる体験よりも強力に、人と人とを結びつけるからだ。
喜びが人同士を結びつける力は、スポーツにはっきりと見てとれる。チームが驚嘆に値するほどベストを尽くし、限界と困難を克服したとき、すべての選手が――それどころか、競技場全体が――溢れんばかりの高揚感を経験し、それによってチームはさらに活気づく。成功は喜びに火をつけ、喜びがさらなる成功を呼び起こす。そのとき、誰もが夢中になっている。
頂点を賭けて戦うスポーツで非常に明白なこの喜びを、ビジネスでも再現することは可能だろうか。もちろん、可能である。