働き方がどんどん多様化するなか、在宅勤務(WFH)を推進する企業は増えている。最近では働く場所を自宅に限定せず、どこで働いてもかまわないWFA(work from anywhere)制度を導入し始めた組織もある。ただ、従業員はリモートワークを希望する一方、雇用者からすると不安に思うこともあるだろう。本稿では、WFA制度がもたらす成果に加えて、企業がリモートワークを実施する際の注意点を示す。


 近年、大手企業数社でリモートワーク制度の後退が見られたが、米国の労働者に関するデータによれば、リモートワークは増加傾向にある。ギャラップの2017年世論調査によると、米国の被雇用者の43%がリモートワークをした経験があり、2018年に公表された米国国勢調査の結果によると、米国の労働者の5.2%が完全に在宅で仕事をしている。

 在宅勤務(work from home: WFH)が比較的当たり前になってきているなか、新しい形のリモートワークが出現しつつある。それは、どこで仕事をしてもよい(work from anywhere: WFA)という、社員が生活と仕事の場所を選べる制度である。一般的には一国内の制限がつくが、信頼できるインターネット接続さえあれば世界中どこでもよい、という場合も中にはある。この制度はまだ導入され始めたばかりだが、アカマイSAPなどの企業では、すでに充実したWFA制度が整備されている。

 働く側は、リモートワーク制度に価値を感じている。2017年の調査では、WFHが可能なら、給料が平均して8%減ってもかまわないという結果が出た。つまりこれは、従業員がWFH制度によって得られる柔軟性に、金銭的価値を見出していることを意味する。

 さらに、WFA制度を導入して社員の地理的自由度を高めれば、企業はいっそう価値を提供することになる。この差は大きい。WFHでは子どもを学校に迎えに行ったり、昼休みに犬を散歩させたりすることができるが、WFAではそのどちらもできるうえに、高齢の両親が住む実家の近くや、生活費を安く抑えられる地域に引っ越すこともできるからだ。