●他人のことを考える

 あなたが仕事のやり方を変えると、ほとんどの場合、他のチームに影響を与える。ところが積極的な人の多くは、自分の積極性が他人にどんな影響を与えるかあまり考えない。

 人事アドバイザーのバネッサの例を紹介しよう。最近、エネルギー企業に転職した彼女は、その会社がまだ社員情報を手書きで記録していることを知り驚愕した。時代遅れだし、時間がかかるし、無責任だと思った。

 そこで彼女は、新しいシステム導入を主導したいと申し出た。ところが、それを実行するためには、すでに大量の仕事を抱える同僚たちが、さらに毎日数時間データを補充しなければならなかった。その仕事を引き受けてもいいと言う人はほとんどおらず、結局、バネッサはそのイニシアチブを途中で断念しなければならなかった。

 バネッサのエピソードは、新しいアイデアを実行に移す前に、他の人の立場を考えることが重要であることを示すいい例である。

 行動を起こす前に自問しよう。「私のイニシアチブで影響を受けるのは誰か」「それを成功させるためには誰を味方につける必要があるか」。その問いに答えを得られたら、自分のアイデアを最も重要なステークホルダーに伝える方法と、どんな準備が必要かを考えよう。あなたがどれほど積極的でも、周囲のサポートがなければ失敗する可能性は高い。

「周囲」は同僚とは限らない。「賢明でない積極性」は、上司との関係も悪化させる可能性がある。

 生産技術者のマックスは、以前いた会社で、それを身をもって経験した。その会社はレンガ製造業で、マックスは窯の稼働時間を伸ばすことによって生産性を高める方法を思いついた。彼はそのアイデアを、上司である生産マネジャーが休暇中に試し、記録的な生産性を上げることに成功した。ところが休暇から戻ったマネジャーは、不意打ちを受けたと感じ、生産性が向上したのは偶然にすぎないとして、窯の稼働時間を以前の通りに戻してしまった。

 このケースのユニークなところは、マックスもマネジャーも賢明だったとはいえないことだ。

 自分の行動がマネジャーに不快感を与えるのではないかと考えなかったマックスも問題だが、彼が事前にマネジャーに相談しなかったのは、上司のコントロール指向ゆえかもしれない。マネジャーがすべてのアイデアを、長時間を要する承認プロセスにかけていたら、イノベーションは窒息してしまう。また、コントロール指向の上司は、積極的な部下が暴走する「リスク」を低下させるものの、積極性そのものも抑制してしまう。

 したがってイノベーションを奨励したい組織は、アイデアを共有することが歓迎されていると、従業員が感じられる環境をつくる必要がある。マックスが、自分のアイデアを快く上司に打ち明けられる環境にあったなら、そのイニシアチブは成功していたかもしれない。