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仕事に対して積極的であることは、高く評価されることがほとんどだ。だが、その姿勢が組織にも同僚にも、また本人にも重大な問題を引き起こすケースがある。張り切って挑戦した結果、大した成果を生まないどころか、自分や他人を傷つけてしまうのだ。筆者らの調査を通じて、「賢明な積極性」を発揮するためには3つの要素が必要であることがわかった。


 どこの会社でも、積極的な人は引っ張りだこだ。理由は簡単。ポジティブな変化を起こしたいとき、こうした人は率先して行動するよう促す必要がない。指示がないと動かない人と比べて、働きぶりも、会社への貢献も優れているし、イノベーターであることが研究からわかっている

 だが、積極的であることが、やっかいな結果をもたらすこともある。積極性が正しい方向に向けられないと、逆効果をもたらし、組織にも、リーダーにも、チームの仲間や他の社員にも意図せぬネガティブな結果をもたらす可能性があることを、最近の研究は示している

 このダイナミクスは、「積極性のパラドックス」と呼ばれる。

 積極的であることは望ましいが、それはリーダーの期待に完全に沿っている場合に限られる。たとえば、間違った改革を進めた結果、組織にコストを生じさせるかもしれない。あるいは、自分の仕事量を調整しようと張り切って交渉した結果、仲間に仕事を押しつけることになるかもしれない。こうした積極性がもたらす「サプライズ」は、チームワークを乱し、結果的に本人にダメージを与えることが多い。

 つまり、積極的になるにも、正しい方法と間違った方法があるのだ。

 私たちは、従業員の積極性がもたらした結果に関する調査95件を分析し、さらに業種の異なる25人の聞き取り調査を行い、成功を最大化する積極的な働き方を調べた。その結果、心理学者のロバート・スターンバーグによる「知恵のバランス理論」と大きく一致する、3つの要因が見つかった。

「知恵のバランス理論」は、知恵とは、みずからの利益と、他者および社会の利益とのバランスを取ることから生まれるとする理論だ。したがって、私たちが「賢明な積極性」、すなわち正しく積極的になる方法と定義するものには、次の3つの要素が含まれる。

 ●自分を管理する

 積極的に活動するためには、多くの時間とエネルギーを要する。したがって、いくつかの問題は自分が対処すべきものではないと判断することが重要だ。あまりにも多くの(あるいは大きな)イニシアチブを引き受けると、瞬く間に燃え尽きてしまうだろう。

 ジェーンがいい例だ。ITコンサルティング会社のコンサルタントだった彼女は、会社が品質管理の国際規格ISOの認証を取得するといいのではないかと考えた。そこで全社的な認証取得努力を指揮すると申し出たが、ゼネラルマネージャーを含めて社内の抵抗は大きかった。

 それでもジェーンは猛プッシュして、1年かけて全員を説得した。彼女の長時間労働のおかげもあり、最終的に会社はISO認証を取得したが、ジェーンは疲れ果て、今後は何かに積極的に手を上げることはしたくないと思っている。「たしかにいい結果は出せたけれど、自分の健康を損なうほどの価値があったかどうかはわからない」

 どのイニシアチブならやる価値があるか、よく検討しよう。また、実際に着手する前に自問しよう。「このイニシアチブを引っ張るだけの関心と、専門的な知識や経験が自分にはあるだろうか」「それを実行する時間とリソースがあるだろうか」。

 一部のイニシアチブは誰かに任せよう。自分が引き受けるイニシアチブを選んだら、時間管理を最適化すること。何かがうまくいかなくなっても、軌道を維持できる方法を練っておくこと。サポート態勢を確保し、無理なことは「ノー」と断り、むやみに仕事が増えないようにしよう。