リーダーが会話を支配しがちでは
メンバーはやる気を失う
ここ20~30年の間に、仕事は一人でするというよりもチームで行うものとなってきた。複数の調査によると、チームは従業員のエンゲージメントという問題の中心にある(本誌28ページを参照)。しかし、ハーバード大学教授の心理学者、J. リチャード・ハックマンの先駆的研究をはじめ、心理学や経営学における長年の研究によると、チームは従業員のエンゲージメントや生産性を高めないことが多い。その最大の理由の一つは、リーダーが会話を支配しがちだからである。人の話を聞かず、他者のアイデアを検討しようともしない上司。その結果、チームメンバーは自分の考えを述べて貢献することに対し恐れを抱いたり、ただもううんざりしていたり、やる気を失っていたりする。
私は学術研究を進める中、世界中のさまざまな組織で多種のチームを見てきた。最もうまくコミュニケーションを取り、誰もが貢献し学んでいたのは、企業のオフィスで働くチームではなく、即興コメディの授業で観察したチームであった。私と夫は、ディナーを楽しんでから映画を観るといういつものデートコースの趣向を変えて、10週間の即興コメディの講座に申し込んだ。予想外にもこの毎週の気晴らしが、私が観察してきたチームによる単調な働き方の改善手段を教えてくれたのである。
即興コメディでは、シーンを演じたり物語を話したりする際に、誰もが話す機会を持っている。メンバーの貢献は歓迎され、価値あるものとされ、参加者は共通の目標に向かってコラボレーションしながら、互いに支え合う。このように、誰もが関与することが重要なのである。お互いのアイデアや見解について話し合う時、私たちはそれらから学び、意思決定をよりよいものにする。さらに、自分の貢献を他者が評価していると感じられれば、いっそうアイデアを共有するようになる。