会話1:レジリエンスを形成する方法

 若い従業員は否定的な体験をすると、自分を責める傾向がある。その自己批判は大げさなことが多く、自信を失うばかりか、仕事の遂行能力まで奪ってしまいがちだ。

 この会話では、否定的な話題を従業員に声に出して言わせるが、いつまでもそれにこだわらせない。彼らがバランスの取れた思考を取り戻し、自己判断を捨て、学ぶべきことを学び、前進できるような前向きな選択肢を1つか2つ発見する手助けをする。

 この会話においては、従業員が体験していることを理解するための質問をする。

・同僚にそう言われたとき、どう感じたか?
・その瞬間、自分自身に向かって何と言ったか?
・そのことは、あなたにとってどのような意味があると思うか?

 話をよく聞いて、相手の言葉を繰り返す。彼らが考えていることを理解できたら、自分の思考から離れ、実際に起きたことを熟考できるような質問をする。

 もし彼らが「失敗すれば必ず信用を失う」と感じているなら、自信がついた瞬間を思い出すように差し向けて、「たった一度の失敗で、本当にあなたを切り捨てたりするでしょうか」と尋ねる。頭の中にある筋書きを声に出して言って見ると、十中八九、それは想像の産物にすぎないものだとわかる。

 最終段階では、今後同じような状況に出会ったとき、別の方法で切り抜けるために、どのような選択肢があるかを考えさせる。

 あなたの口調は最初から最後まで、思いやりがあり、肯定的感情も否定的感情も伴わせることなく、批判的にならないように気をつけよう。あなたの仕事は、彼らの問題を解決することでも同情することでもなく、励みになるフィードバックで奮い立たせることでもない。むしろ、彼らが学習するのを助け、逆境から回復する力を高めるようにすることである。

 会話2:他者への影響力を持つ方法

 従業員が人間関係で苦労しているとき、よいキャリアコーチは、その相手が他者の視点から状況を見直し、新しい関わり方や関係構築の方法を発見できるようにする。シンガポール経営大学と共同でデータを分析したところ、若手従業員とのコーチングにおける会話の39%は、彼らが人々に影響を与え、ネットワークを築き、望ましい効果を生み出せるよう手助けすることに焦点を当てていた。

 一例を挙げよう。私たちがコーチしたある新卒者は、よそよそしく冷淡に見えるディレクターと関わらなければならなかった。

 コーチングでマネジャーは、彼にディレクターの身になって考えさせた。ディレクターの責任範囲の広さを考慮すると、冷淡に見えたのは自分の先入観のせいかもしれないと、彼は気づいた。また、その従業員は自分の役割が企業の成功にどう貢献するかを、より意識するようになった。その結果、当初の自己防衛は好奇心や共感、自信へと変化した。彼はアプローチを変えたことで、そのディレクターとまったく違う関係を築くことができ、ディレクターは生涯のメンターとなった。

 このタイプの会話では、従業員に他者の視点で考えさせる。

 たとえば、あなたが話し出す前に、相手が自分の話を聞いてもらっていると感じるようにするには何が必要だろうか。まず、新しく得た洞察によって、どのようにコミュニケーションを改善すれば、信頼を築けると思うか質問しよう。「そうなんです、あのディレクターは、いつもああですよ」などと同情したり、あなたが考える解決策を提供したりしないこと。彼自身に、その人物との別の関わり方を発見させることが肝心だ。