会話3:ジョブクラフティングの方法

 この会話のポイントは、従業員が自分にとって何が最も大切かを熟考し、自分の将来について納得できるビジョンを形成できるよう、手助けすることだ。意義ある仕事をすることは、多くの人々にとって重要なことだ。目的意識を感じられないと、人は燃え尽きやすくなってしまう。

 私たちの研究対象の一人で、周囲から高い評価を得ている従業員の例を見てみよう。

 彼女はチームのプロジェクトのために長時間仕事をした。プロジェクトは成功したが、彼女は最後には疲労困憊し、自分は与えられた役割に長期的にはコミットできないとマネジャーに告げた。マネジャーはこの機会をとらえて、そもそも彼女がこのチームに参加した理由を思い出させた。彼女が求めていたものは何か、その実現のために何を変える必要があるかをはっきりさせるような質問をした。すると彼女は鼓舞され、前に進む熱意を取り戻した。

 チームのメンバーを同じように鼓舞するには、彼らにとって何が大切かを質問し、彼らが求めるものに焦点を合わせよう。

・いま、何が起きているのか?
・その状況が、どのように変わってほしいのか?
・そのビジョンに向かって前進するために、あなたに一つできることは何か?

 他人がどう思うか、あるいは何を期待するかという質問しないこと。また、あなたの個人的体験を話すのも避けよう。むしろ従業員が現在、自分が置かれている状況、自分が望んでいる状況、そこにたどり着くためにどのようなステップを踏む必要があるかを明確にすることに、重点を置くのが重要だ。もし自分の求めるものがわかっていないならば、興味を持っているのはどの方向なのか、その道を探求できるよう手助けしよう。

 会話4:型にはまった思考から抜け出す方法

 従業員は、自分で問題を解決しようとして行き詰まることがある。一度試してうまくいかないと、諦めるか、同じ方法でもう一度試みようとする。マネジャーは、チームのメンバー自身がこの「思考の川(rivers of thinking)」に気づき、お決まりの思考回路から抜け出せるように手助けするすることができる。

 私たちがコーチしたある新卒者は、自分が運営する研修イベントに人が集まらない理由がわからずに苦しんでいた。参加のモチベーションになるような、新しい創造的な方法をいくつも試したが、そのたびに失敗していた。

 マネジャーは、彼女に別の角度からその問題を考えさせた。いまの研修に人を集めるための方略を練るのではなく、どのようなイベントなら人が参加するのかに目を向けさせた。

 この新しい思考プロセスによって、彼女は自分のイベントが底の浅いものだったことに気づいた。彼女が提供する情報は、すべてインターネットで見つかるものだった。従業員が求めていたのは、同僚からアドバイスやサポートをもらう機会だったのだ。そのことを頭に入れて、昼休みに集まるネットワーキングクラブを立ち上げると、大盛況となった。

 この会話では、従業員が自分の思考の行き詰まりに気づき、新たな探求の方法を見つける手助けをする。そのためには、次の質問から始めよう。

・どのような問題を解決しようとしているのか?
・その問題に対して、どのような感情を抱いていると気づいたか?
・最も懸念しているのは何か?
・周囲の人々は何に苛立っているように見えるか?

 目的は、どのような問題を解決しようとしているのか、なぜ自分たちの努力が功奏しないのかを、彼ら自身に突き止めさせることだ。その答えを反復し、彼ら自身が現在の行動プランに何か間違いがあることを理解したならば、これまで集めたすべての情報を検討しながら、別の解決策を考えるように促す。

 繰り返しになるが、あなたの役割は解決策を提供することではない。彼らが、いかなる問いに対する答えを探しているのかを明確にし、多様な情報源から見解を集め、これまで学んだことを熟考して、よりよい新たな戦略を考え出せるように手助けすることである。

 従業員を未来のリーダーに育て上げるには、自分の態度や行動を変化することができるマインドセットを、習得させることが欠かせない。そのようなマインドセットが身に着けば、彼らは満足感を抱き、組織とのつながりを持ち続け、長期的に潜在能力を発揮するようになるだろう。その最初の一歩は、従業員があなたに求めるものを見極め、それにふさわしい会話をすることである。


HBR.org原文:To Coach Junior Employees, Start with 4 Conversations, September 09, 2019.

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ジェリー・コナー(Jerry Connor)
BTSコーチングプラクティス責任者。BTSは、あらゆるレベルのリーダーがよりよい意思決定をし、決定を行動に移し、結果を出せるよう支援している。チェンジマネジメントとリーダーシップ開発に26年以上の経験を有するジェリーは、さまざまなトップクラスの国際組織や公共部門との豊富な仕事経験を持つ。