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多くの国でダイバーシティが推進されるなか、女性取締役の採用に積極的な企業が増えてきた。それにより買収や投資など経営の意思決定の質が上がることが証明されているが、その理由はなぜか。筆者らは、女性役員の存在が男性CEOの自信過剰を抑制するからだという仮説を立て、それを検証した。


 少なからぬ数の政府機関が、企業の取締役会における女性の参画強化を推進している(インド、カリフォルニア、欧州諸地域の政府が特に顕著だ)。

 複数の研究結果を見れば、その理由がわかる。取締役会における女性の存在は、買収・投資の意思決定の向上につながり、積極的なリスクテイクの傾向を抑制し、株主にとってメリットになるからだ。とはいえ、なぜこうした影響が生じるのかについては、さほど明らかではない。

 筆者らの研究は、一つの潜在的理由を示すものである。女性役員の存在は、男性CEOの自信過剰を抑制する一助となり、会社の全般的な意思決定を向上させるのだ。

 この現象を調査したいと我々が考えたのには、理由がある。過去の研究で、CEOの自信過剰が企業に害をもたらすこと、そして、この性質は男性CEOの間でより色濃く見られるものであることが示されているからだ。

 CEOは自信過剰に陥ると、リスクを過小評価し、リターンを過大に見積もる。それが過剰な投資とリスクテイクにつながり、株主価値の毀損を招く可能性があるのだ。

 CEOを監視・監督する義務を負う取締役会は、どのような形でCEOの自信過剰を抑制しうるのか。我々は、この点を知りたいと考えた。

 女性役員がいることのメリットの一つは、視点の多様性が広がることである。これは、取締役会における審議の質の向上を意味する。複雑な議題が絡む場合は、このメリットがいっそう顕著になる。なぜなら複数の異なる視点があれば、より多くの情報が得られるからだ。

 さらに研究によれば、女性役員は男性役員に比べて、(多数派への)同調や迎合をする傾向が低く、独自の見解を表明する姿勢が強い。男性同士のネットワークに属していないからである。

 したがって女性メンバーがいる取締役会は、企業戦略の意思決定の場で、CEOに異議を唱え、より広範な選択肢と賛否両論を検討するように迫る傾向が強いのかもしれない。それによってCEOの自信過剰が抑制され、バイアスの可能性をはらむ考え方の是正につながるのではないだろうか。